日本臨床救急医学会雑誌
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原著
高齢者福祉施設における急変時の対応に関する検討
〜蘇生行為を希望しないことの事前指示表明の把握も含めて〜
真弓 俊彦竹村 春起志水 清和平林 祥家出 清継中村 俊介江崎 友香松井 智子永田 二郎
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2017 年 20 巻 3 号 p. 521-528

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抄録

目的:高齢者福祉施設入所者が増加し,心停止例の施設からの救急搬送も増加している。しかし,なかには,蘇生行為を希望しない事前指示を表明している患者も救急搬送されることが少なくない。そこで,施設での蘇生処置を希望しない事前指示(以下,事前指示)表明の確認や急変時の対応について明らかにするために,施設にアンケート調査を行った。対象と方法:高齢者福祉施設に,入所者の事前指示の表明の確認や急変時の対応について書面によるアンケート調査を行った。結果:回答率は59.8%であった。入所者に事前指示の表明の有無を確認していない施設が44.8%,急変時のマニュアルがある施設は18.1%,「マニュアルも対応の仕方も定まっていない」施設が34.3%あり,体制が十分整っていないことが明らかになった。また,事前指示を表明している入所者が急変した場合でも,全例救急搬送を要請する施設が43.6%と少なくなく,入所者の看取りができていないことも判明した。しかし,これらの割合は,施設の形態,医師が対応可能な施設とそうでない施設,マニュアルや急変時の対応の整備の有無によって,大きな相違があった。結語:尊厳な死を迎える権利を尊重するための対策が必要である。施設は医師との連携を確立するとともに,施設だけではなく,関連学会など関係組織の協力によって,マニュアルや対応の仕方を定めるとともに,急変時の対応や看取りに関する教育が必要である。

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© 2017 日本臨床救急医学会
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