日本臨床救急医学会雑誌
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調査・報告
院外心停止発症からアドレナリン投与までの時間と転帰の検討
久保 敦士國立 晃成加藤 正哉
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2024 年 27 巻 4 号 p. 515-521

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抄録

背景:アドレナリンは,院外心停止(OHCA)において自己心拍再開(ROSC)の可能性を高める薬剤であるが,心停止発症からアドレナリン投与までの時間が病院前救護での予後に及ぼす影響について,有効性を示す証拠は十分ではない。目的と方法:本研究では,地域プロトコールに基づく救急活動における心停止発症からアドレナリン投与までのタイミングがOHCA傷病者の転帰にどのような影響を与えるかを検討する。和歌山県紀北MC(2021年4月〜2022年3月)を対象に,ウツタイン様式に基づいた検証票を用いた観察研究を実施し,薬剤プロトコール適応である8歳以上のOHCA症例の206症例を抽出した。結果:74例(35.9%)にアドレナリンが投与されたが,自己心拍再開(ROSC)は49例(23.8%),神経学的予後良好(CPC・OPC:1 or 2)は9例(4.4%)にとどまった。アドレナリン投与例の中央値は,心停止発症から20分を超えていた。結論:現場でのアドレナリン投与は,非投与群との比較において,投与のタイミングとROSCや良好な機能的転帰との関連性を明確に示すことはできなかった。

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