教育実践学研究
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教育実習経験は学生の授業中の子どもに向ける視線や気づきに影響するか?
教育実習経験学生と未経験学生の視線分析研究から
篠田 裕文山本 剛松村 京子
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2022 年 23 巻 2 号 p. 1-13

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抄録

教育実習を経験した学生と未経験学生が小学校の授業映像を視聴する際の視線を測定した.映像中で担任教師から授業への参加を促される児童(ビデオ1), 教師の指示に反して教科書を開き続けた児童(ビデオ2)への視線停留回数,停留時間,視線1 回当たりの視線停留時間を検討した。その結果,教育実習経験者と未経験者間に有意な差は見られなかった.一方,教育実習経験学生はビデオ1及び2においてターゲット児童の存在に気づいた割合が高かった.しかし,気づいた学生にターゲット児童の指摘を求め正確性を調べたところ,教育実習経験の有無による差は見られなかった.そこでターゲット児童に対する視線の各項目について,実習経験の有無(経験学生・未経験学生)×正確性(一致・不一致)の2元配置分散分析を行った.その結果,ビデオ2で視線停留回数に交互作用が認められ,実習経験学生において,一致者が不一致者よりもターゲット児童への視線停留回数が有意に多いことが明らかになった.また,一致者においては,ターゲット児童への視線停留回数が経験学生で未経験学生よりも有意に多かった.以上のことから,教育実習経験学生と未経験学生では,気づきと視線において明確な違いはみとめられなかったが,オフタスク児童に気づいた経験学生は未経験学生より視線を頻繁に停留させるなどの違いも見られた。

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