思考,行動,感情をコントロールする自己制御能力とその基盤となる実行機能は,学校生活への適応や学力,対人関係に影響を及ぼすことで近年注目されている.本研究では,小学2 年生と4 年生の自己制御能力と実行機能の下位要素である抑制,注意切替え,ワーキングメモリ(以下WM)を直接測定し,それらの能力の発達を検討した.その結果,2 年生に比べ4 年生は,自己制御能力および実行機能のうち,抑制,注意切替え,視覚的WM が有意に高かった.聴覚的WM には有意差がみられなかった.実行機能の下位要素を説明変数,自己制御能力を従属変数として重回帰分析を行った結果,2 年生では抑制が,4 年生では注意切替え,視覚的WM,聴覚的WM が自己制御能力を予測することが明らかになった.この結果は,聴覚的WM を除いて実行機能は2 年生から4 年生へと発達すること,そして,2 年生と4 年生で自己制御能力に影響を及ぼす実行機能が異なることを示している.