2024 年 37 巻 2 号 p. 215
腎動脈を阻血下で行う腎部分切除術は阻血時間が限られる中, 腹腔鏡下腎部分切除術は体腔内での腫瘍切除・切除断面の止血縫合など技術的に難易度が高いため, どの泌尿器科医でも行える手術術式ではありませんでした. 一方, 手術支援ロボットにおいては, 3D画面かつ拡大視野・自由度の高いEndoWristによる操作といった特徴を生かすことで腫瘍切除・止血縫合をより容易に行うことができるので, 手術支援ロボットを導入している施設ではこれまで腹腔鏡下腎部分切除術を行っていなかった泌尿器科医も手術支援ロボットを用いた体腔内腎部分切除術 (RAPN) を行えるようになってきました. さらにこの操作性の向上によって, より難易度の高い完全埋没型腫瘍, 腎門部腫瘍, cT1b腫瘍, 多発腫瘍に対しても腎部分切除術に対応することが可能になってきました.
本特集では1) 本郷先生に体腔内腎部分切除術を総論的に解説いただくとともに, 腎部分切除術時に重要な腎動脈の阻血方法を纏めていただきました. 2) 伊藤先生には完全埋没型腫瘍の手術方法のポイントを詳細に纏めていただき, 自施設の完全埋没腫瘍の手術成績をもとに, 非完全埋没腫瘍のそれと比べて, 手術支援ロボットを使用することでtrifectaの達成率は劣るもののpentafectaの達成率は差がないことを提示いただきました. 3) 高木先生には多発性腫瘍へのアプローチを纏めていただきました. A) 腎部分切除術または腎摘除術, B) 腎部分切除術または局所療法 (経皮的凍結療法やラジオ波焼灼療法), C) RAPNか開腹手術, どちらを選択するのか, その判断基準とその成績について自施設のデータを交えながら解説いただきました. 4) 最後に三重大学西川先生には, より難易度の高い腎腫瘍に対してRAPNをする中で, 術前はcT1aないしT1bと診断していても術後の標本でpT3aとなる症例に遭遇する機会が増えてきていると思いますが, 実症例を用いながらどんな症例がpT3aとなるのか, その術後成績はどうなのかを纏めていただきました.
病理所見で再発の危険性が高い症例では, 術後のチェックポイント阻害剤補助療法の再発予防の有用性が示されてますが, 腎細胞がんの手術は第1にoncological outcomeの向上すなわち再発をさせない手術を達成することが大切で, 術式選択は個々の技量に合わせてそれを達成するための最善の方法を次に考えることになります. 是非, 本特集を読んでRAPNを再考していただき, 安全で着実なRAPNを行ってください.