Japanese Journal of Endourology and Robotics
Online ISSN : 2436-875X
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特集1 : ロボット支援手術の高難易度症例への対応
  • 近藤 幸尋, 冨田 善彦
    2023 年 36 巻 2 号 p. 151
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     ロボット支援手術も2022年に多くの泌尿器領域の術式で保険適応になってきました. その中で前立腺全摘除術, 腎部分切除術, 膀胱全摘除術に関しては多くの施設で導入済みであり, よりチャレンジケースにも施行されていることと思います. その中で本企画では, これら3術式における高難易度症例に対してエキスパートの先生に解説していただきました.

     まず前立腺癌においては, 天理よろず相談所病院の奥村先生に大きな前立腺および中葉肥大症例に関して解説していただきました. 比較的多く認める中葉肥大に関して膀胱頸部温存に結びつく剥離法などを中心に解説していただき, より簡便で安全に施行できるような解説となっています.

     腎部分切除術においては時間との戦いもあり適度な大きさで外方突出型はそれほど負担なく行われているとおもいますが, 完全埋没型・腎門部腫瘍・toxic fat症例・再手術症例など, よりハードルの高い症例も多々存在します. これらの症例に関して東京女子医科大学の高木先生に非常に豊富な経験症例より, 術前準備から良好な視野確保の仕方や丁寧な切離に関して解説していただきました.

     膀胱全摘除術に関しては, 本術式のパイオニア的な岐阜大学の古家先生に困難症例を挙げ解説していただきました. 膀胱は比較的大きな臓器でそれを把持や剥離展開することもオンコロジカルアウトカムを考えながら行う必要があります. それらを考慮に入れつつ異なる困難例の7症例を挙げていただきました.

     以上の3術式は現在のロボット支援手術の多くを占めており, それぞれの先生の示唆に富んだ内容は目の前の困難症例を打開するに十分な内容になっています. 本特集を一読するだけでなく, 手術前の解説書として利用していただければ至福の限りです.

  • 奥村 和弘
    2023 年 36 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     前立腺全摘除術は症例により手術の難易度は大きく変わってくる. ロボット手術になり手技は容易にはなったが, 時に難易度の高い症例に出会い難渋する事がある.

     難易度の高い症例としては, 狭骨盤症例, 大きなBPH症例, 中葉肥大症例, 前立腺周囲の癒着が強い症例, 腹腔内手術や鼠径ヘルニア手術の既往のある症例等が挙げられるが, このような症例に対しては, 適切な対応が安全に手術を遂行するには重要であり, 手術適応の拡大にもつながる.

     ここでは手術困難症例の中でもよく遭遇する大きなBPH症例と中葉肥大症例に対しての対応法につき解説する.

     大きなBPH症例は, 前立腺の牽引が十分に出来ず良好な術野を展開するのが難しくなるため, 適切なラインでの手術が困難になる. 特に膀胱頸部の処理が困難である. 大きな中葉肥大も膀胱頚部の切離を困難にする要因の1つである.

     大きなBPH症例に対する膀胱頸部処理では, まず膀胱と前立腺の境界のラインを認識し, このラインに沿って剥離を進めていく. 前立腺の形を明確にするために前立腺・膀胱間を左右両側とも広い範囲で一様に切離していく. 特に両外側は十分に処理をしておく事が重要である.

     中葉肥大症例に対しては, なるべく膀胱頚部を温存しながら切離を進め, 尿道前壁を切開する. 中葉を直接Pro-Graspフォーセプスで把持し膀胱頸部から引き出し, 軽く腹側に牽引する. そして中葉の背側の筋層の存在する部位で後壁を切開する. 適宜, 中葉を腹側に牽引しながら膀胱・前立腺間のラインを注意深く確認しながら切離を進めていく.

     このようなポイントに注意しながら対応する事で, 困難症例であっても安定した手術成績を残す事ができる.

  • 高木 敏男
    2023 年 36 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     ロボット支援腎部分切除術は2016年の保険収載以来, 多くの施設で行われており, 高難度の症例に対しても適応は広がっている. 東京女子医科大学泌尿器科においては, 年間約300件のロボット支援腎部分切除術を行なっているが, そのうち15-20%が高難度症例 (T1b, 埋没型, 腎門部) である. そのような症例に対しては, 綿密な術前準備, 良好な視野の下での切除, 正確な再建術が求められる. 本稿では, それらに対するコツを記載する.

  • 古家 琢也, 中根 慶太, 飯沼 光司, 髙井 学, 加藤 大貴, 川瀬 真
    2023 年 36 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     本邦では2018年にロボット支援膀胱全摘除術 (RARC) が保険収載され, 多くの施設で行われるようになってきた. RARCは低侵襲手術の一つとして考えられているが, 周術期合併症については, 年々減少傾向にはあるものの, グレードの高い合併症は一定の頻度で発症している.

     実際の手術では, 画像で腫瘍を認めた部位と反対側に腫瘍の浸潤を認めた症例, 腫瘍が大きく, 剥離面が全く展開できなかった症例, などに遭遇する. また, 高齢や, 合併症を理由に, RARCと尿管皮膚ろうを行った症例もある. 術後早期に亡くなったものの, 少なくとも, 膀胱タンポナーデを回避できたことは, 手術の意義があったと考えている.

     本稿では, 我々の経験した難易度の高いと思われる症例を提示し, RARCの適応や問題点や, RARCに対する考え方などを紹介する.

特集2 : ロボット支援手術のトラブルシューティング
  • 神波 大己, 藤井 靖久
    2023 年 36 巻 2 号 p. 169
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     2012年に泌尿器科領域の術式であるロボット支援腹腔鏡下前立腺摘除術 (RARP) が本邦で初めて保険収載されて以来, 日本泌尿器内視鏡学会 (JSE) 総会において, そして日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 (JSER) 総会においても毎回「トラブルシューティング」をテーマにしたシンポジウムが企画されてきました. 「どうせまた同じような内容だろう」とこのような企画から足が遠のいてしまっている会員もいるかもしれません.

     ロボット支援手術のトラブルには, ロボットという機器の特色によるものもあれば, ロボット支援手術が適応される術式固有のものもあります. 前者は先達が後進に継続的に伝承しなければ非常に危険なトラブルを引き起こしますし, 後者は術式が増えるたびに新たに議論を開始しなければその術式の安全が担保されません. このように, 安全やトラブル対処への取り組みに終わりはありません. 一旦立ち止まってしまうと, 時間とともに風化し, やがて脳裏から離れ忘れ去られる運命にあるからです. 事故はそのような時に静かに背後から忍び寄ってくるものです. 「またか!」と思われるくらいにしつこく継続し, 会員のDNAに刷り込まれるくらいでちょうど良いのではと思います.

     さて, 今回のシンポジウムでは4名の先生から, それぞれのテーマに沿ってロボット支援手術のトラブルシューティングを取り上げていただきました. 矢津田先生には, 「トラブル予防のための術前画像評価」をテーマにRARPを例に取って自施設での取り組みをご紹介いただきました. 山﨑先生には, 泌尿器科特有のアプローチである後腹膜アプローチでのRARPやロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術 (RAPN) を多症例施行している立場から「後腹膜アプローチ」というテーマでそのトラブルシューティングの経験を, また日向先生には国産の新規手術支援ロボット「hinotori」をテーマとしてトラブルシューティングにおける「daVinci」との違いと工夫について「開発から臨床実装に至る全行程に関与してきたトップランナー」としての経験をそれぞれお話しいただきました. 絹笠先生には消化器外科医の立場から「他科領域におけるロボット支援手術」をテーマに大腸ロボット支援手術を例として泌尿器科医にも役立つ, そして再認識すべきトラブルシューティングをご紹介いただきました.

     最後に, 貴重な「教え」を賜りました4名の先生にこの場を借りて厚く御礼申し上げます. 4名の先生の「教え」は皆様の今日からの日常診療に必ず役立つものと確信しております.

  • 矢津田 旬二, 神波 大己
    2023 年 36 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     ロボット支援根治的前立腺摘除術が本邦で保険適応となって約10年となり, 手術件数は増加している. ロボット支援手術は3Dかつ拡大視野で行われるアドバンテージはあるものの, 触覚は失われる事となる. 長所となる術中視覚情報をいかすために, 術前画像から術野を予測し構成する必要があり, 術前画像評価が以前にもまして重要であると考える. 本稿では当科における術前画像評価によるトラブル予防と術中リカバリーについて記載する. 術前のMRIでは癌の局在, detrusor apronの伸長の程度, 前立腺の膀胱内への突出の有無, 前立腺の左右と上下の対称性といったところを検討している. また膀胱頸部の状態を含めた前立腺の形状を確認している. 主にリンパ節郭清の際に必要となるが, CTで尿管や血管の走行を確認している. 術中トラブルとしては, 直腸損傷と膀胱損傷と尿管損傷をとりあげた. 直腸損傷は術中に発見できれば吸収糸による縫合で, 一期的に修復できる可能性が高いが, 術後しばらく経過して発見された場合は, 人工肛門が必要となる. 膀胱損傷も吸収糸での縫合で対応可能であるが, 尿道カテーテルの留置期間を通常よりは長くする必要がある. 尿管損傷は中葉肥大症例や重複尿管症例で多いとされる. 軽微な損傷であれば尿管ステントの留置と吸収糸での縫合で対応可能な場合もあるが, 尿管端々吻合や, 尿管膀胱新吻合が必要となった症例も存在した. 特にこれからロボット支援根治的前立腺摘除術を始める先生方の, 一助になれば幸いである.

  • 山﨑 俊成
    2023 年 36 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     泌尿器科領域のロボット支援手術において, 手術部位への到達アプローチに選択肢を持つことは, 手術適応の判断や手技の容易さとそれに伴う合併症軽減の観点から有用である. 経腹膜アプローチと後腹膜アプローチではワーキングスペースの広狭, 解剖学的ランドマークの多寡, 周囲臓器損傷のリスクといった点で従来の体腔鏡下手術と同様の違いがあるが, ロボット支援手術の導入により後腹膜アプローチの短所が改善された側面もある. RARPでは一般的に経腹膜アプローチが選択されることが多いが, 腹部の手術既往や合併症により高度頭低位が困難な症例に対しては後腹膜アプローチが有効である. また, RAPNでは腫瘍位置により腫瘍周囲の剥離や切除の難易度に大きな違いが生じるため, いずれのアプローチにも習熟しておく必要がある. 一方で, 後腹膜の限られた空間での鉗子操作にはより習熟した技術を要する上に, 腹膜の開放により気腹されるとワーキングスペースがさらに狭くなり, 出血により術野の視野が不良となりやすい点にも注意を要する. われわれの施設では, RARPでは骨盤内リンパ節郭清の有無により, RAPNでは腫瘍位置によりアプローチを使い分けているため, 比較的多くの症例を後腹膜アプローチで遂行している. 本稿では後腹膜アプローチRARPおよびRAPNのポート配置, 術野展開, 術中手技についての現状を述べるとともに, 術中トラブルに対する留意点や対応について概説する. 事前の十分な手術計画とシミュレーションにより, トラブル自体を回避する努力が最も大切であるが, 起こりうるトラブルを想定し, 安全で確実なトラブルシュートを選択できることも重要である.

  • 日向 信之
    2023 年 36 巻 2 号 p. 182-186
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     ロボット支援手術は, 腹腔鏡手術の低侵襲性に加え, 高画質3次元画像による視認性, 直感的な操作, 繊細で複雑な鉗子操作などの利点により普及し, 本邦において泌尿器科のmajor surgeryはほぼ全てロボット支援下に行うことが可能となった. しかしながら, ロボット支援手術中のトラブルは, マネジメントのミスが重なった場合, その結果として臓器損傷や手術続行不能, 手術操作困難による術後Outcomeの悪化などを引き起こす可能性がある. このため, ロボット支援手術を実施するに際してはロボット支援手術あるいは機種に特有のトラブルについて熟知しておく必要がある. daVinci® surgical systems (Intuitive Surgical Inc. AC, USA, 以下daVinci) とhinotoriTM Surgical Robot System (Medicaroid Corporation, Kobe, Hyogo, Japan, 以下hinotori) の基本的な操作法および鉗子の形状については, ほぼ同様であるとは言え, 機器としての構造や制御プログラムにはそれぞれ異なった点もあり, 本稿ではdaVinciとhinotoriのトラブルシューティングの違いと工夫につき概説する.

  • 絹笠 祐介
    2023 年 36 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     国内における下部消化管外科領域のロボット支援下手術は, 2018年に直腸切除術が保険収載となったことを契機に増加傾向であり, 2022年には結腸悪性腫瘍も保険下に施行可能となった. 我々は2011年に前任地の静岡がんセンターにて本術式を積極的に導入し, 保険収載後は, 殆どの大腸切除をロボット支援下にて施行し, これまで1,000例超のロボット支援下手術を行ってきた. その間に経験したメカニカル/テクニカルトラブルを供覧する.

     東京医科歯科大学で2017年10月から2022年に2月までのMEセンターに報告のあった機器のトラブルは, 36件であり, Non recoverable faultによる再起動は9回認め, Emergency Power Offを2回認めた. テクニカルトラブルでは, 触覚の欠如によるものや, ペダル操作のエラーなどロボット支援下手術特有のトラブルも多く, 助手によるトラブルも散見された. 術者のみならず, 助手を含めて, ロボット機器に対応する知識と技術の取得が重要である.

特集3 : ECIRSの標準手術手技を考える
  • 原 勲, 安井 孝周
    2023 年 36 巻 2 号 p. 193
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     尿路内視鏡技術の発展に伴い, 内視鏡併用腎内手術 (endoscopic combined intrarenal surgery : ECIRS) はサンゴ状結石のように複雑で大きな腎結石に対する標準的な治療として位置付けられるようになってきた. ECIRSは経皮的腎砕石術 (percutaneous nephrolithotripsy : PNL) と経尿道的腎尿管結石砕石術 (transurethral lithotripsy : TUL) を同時に進行させる術式であり, 海外を問わず普及しつつある. 一方で, 従来からのPNLやTULに馴染みのなかった施設では比較的ハードルの高い術式であり, 入念に準備した上での導入が望ましい. 本特集ではECIRSの経験が豊富な4つの施設からそれぞれテーマを決めていただいた上で解説いただく.

     まずは大口東総合病院の松崎純一先生にECISRの標準術式についてstep by stepに概説いただく. 次に原泌尿器科病院の井上貴昭先生には, 特に経皮的アプローチ (腎杯穿刺とトラクト拡張) に関して出血を少なく安全に施行するコツに関して解説いただく. 3番目に和歌山県立医科大学の山下真平先生からは大学病院のような結石のエキスパート以外の先生も参加するような状況でのECIRSに関し, 特に安全面からの注意を含めて解説いただく. 最後に名古屋市立大学の濱本周造先生からは, 腎結石の中でも特に難しいとされるサンゴ状結石に対してECIRSを行う際に注意すべき点につき解説いただく.

     ECIRSにおいても基本的にはPNLとTULの原則を忠実に守ることが肝要である. 一方で両者を併用するにあたってのtips & tricksが存在する. これからECIRSを導入しようとする先生にとって本特集が参考になれば幸いである.

  • 松崎 純一, 福田 哲央, 石川 達郎, 田尻下 紘直
    2023 年 36 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     ECIRS (Endoscopic Combined IntraRenal Surgery) は, PNLとTULを同時に行う方法であり, 単回の治療でstone freeを目指すことが重要である.

     PNL+TULのメリットは, PNLの高い結石の除去率と短い手術時間とTULの広い操作範囲, 低い侵襲性である. デメリットは体位に関連する合併症 (positioning injury) である.

     基本的な手技はTULとPNLの手技に準じており, 両方の知識と経験が必要である.

     ECIRSの標準的な術式については上部尿路結石内視鏡治療マニュアルにおいて「ECIRSの標準的な手術術式はない. 各施設において慣れた体位, 方法で行うことを勧める」と記載されている.

     当院で重要と考えているのは以下の2点である.

     ①穿刺 ECIRSの成否にはトラクトの作成が重要であり, 確実な穿刺が求められる.

     このため可能な限り内視鏡操作で行う. 透視下操作は放射線被爆を軽減するために最低限にするように心がける.

     穿刺部位に逆行性に軟性尿管鏡が到達する場合には, エコー下で穿刺し, 到達不可な場合には, 拡張前にトラクトを順行性に硬性尿管鏡で観察し, 確実に尿路に穿刺していることを確認する.

     ②細径化 トラクトサイズが大きくなるほど, 出血性のリスク, 輸血率が増加するため, なるべく細径のトラクトを作成する.

     当院のECIRSはTULの技術を用いて安全に経皮的操作 (PNL) を行う意識が大切と考えており, 安全確実な手技を心がけることが重要と思われる.

  • 井上 貴昭
    2023 年 36 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     EAU, AUAのガイドラインにおいても2 cm以上の腎結石に対する標準的治療は経皮的腎砕石術 (Percutaneous nephrolithotomy ; PNL) である. 一方, 本邦では経皮経尿道的同時腎砕石術 (Endoscopic combined intrarenal surgery ; ECIRS) が大きな腎結石に対する治療として徐々に増えている傾向がある. しかし, いずれの手術も経皮的アプローチを必要とし, 依然難易度が高い手術手技に変わりはない. 本稿では私が日々の臨床の中で考えてきたwell-managed approach for less bleedingをご紹介したい.

  • 濵本 周造, 鳥居 孝英, 磯谷 正彦, 河瀬 健吾, 海野 怜, 田口 和己, 岡田 淳志, 安井 孝周
    2023 年 36 巻 2 号 p. 205-211
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     サンゴ状結石を治療するには, 適切な体位の作成, 腎穿刺部位の選択, 安全なトラクト作成, 効率的な砕石・抽石方法, リスクマネージメントが重要である. これらを達成するために, 細径・複数のトラクトへの応用, 新規砕石デバイスの開発など, 経皮的腎砕石術 (Percutaneous nephrolithotomy : PCNL) の進歩につながってきた. しかし, 今なおPCNL単独治療では, 治療成績に限界があり, 本邦では, 経皮的・経尿道的内視鏡治療を併用するEndoscopic combined intrarenal surgery (ECIRS) が主流になりつつある.

     ECIRSは, PCNLの特徴である高い結石抽石率と短い手術時間を活かすとともに, 硬性腎盂鏡の欠点である高い侵襲性や限定された操作範囲を, Transurethral lithotripsy (TUL) における軟性尿管鏡を用いた広い操作範囲とで補うことで, 単一トラクトによる高い治療効果が達成できる手術である. 特に複数の腎杯を占めるサンゴ状結石に対しては, 硬性腎盂鏡では到達困難な腎杯内結石の破砕効率の改善が期待できる. 一方, PCNLとTULの2人の術者が同時に操作を行うため, 連動して内視鏡を操作しなければ, 効果的な砕石が得られないことに加え, 機器の破損や, 尿管鏡周囲へ砕石片の嵌頓により尿管損傷に繋がる. さらに過度の腎盂内圧上昇にともなう術後感染症などのPCNL単独治療とは異なる課題も多い.

     そこで本項では, サンゴ状結石を治療する上で重要と考えられる, 術前準備や術中のリスマネージメントに着目し, 私が考える理想的なECIRS手技について紹介する.

  • 山下 真平, 岩橋 悠矢, 出口 龍良, 村岡 聡, 若宮 崇人, 柑本 康夫, 原 勲
    2023 年 36 巻 2 号 p. 212-216
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     内視鏡併用腎内手術 (endoscopic combined intrarenal surgery : ECIRS) は, 経皮的腎砕石術 (percutaneous nephrolithotipsy : PNL) と経尿道的腎尿管結石砕石術 (transurethral lithotripsy : TUL) を組み合わせて上部尿路結石を治療する比較的新しい術式であり, 近年, 国内外において広く普及しつつある. しかしながら, 施設毎に経験症例数や医師構成, 導入物品など様々な特徴があるため, ECIRSの手術手技を施設間で統一することは難しい. 重要なのは, 各医師・各施設が自身の施設の特徴を踏まえ, 各々にとっての標準手術手技を確立し, 安全にECIRSを実施することである.

     当科では, 大学病院という特性上, 術者・助手の固定が難しく, 手術に関わる医師の数や個々人の経験できる症例数に限界がある, という問題点がある. High-volume centerのようなECIRSのエキスパートが不足した状況下において, 時に重篤な周術期合併症が起こりうるECIRSを行っていく上では, より安全性を重視した手術手技の工夫が必要不可欠である. このような背景から, 当院では, ECIRSの術前準備, 標準的な手術手技として, ①術前造影CTによる手術シミュレーション, ②開脚腹臥位による安全性を優先した穿刺, ③細径腎盂鏡 (Mini/Ultra-mini PNL) を活用したstaged procedureなど, 効率よりも安全性をより重視した取り組みを共有・徹底してきた. 本稿ではそれらの取り組みを紹介する.

特集4 : Focal Therapyの最前線
  • 浮村 理, 宮嶋 哲
    2023 年 36 巻 2 号 p. 217
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     近年, 核磁気共鳴画像 (MRI) や, 生検技術の進歩に伴い, 前立腺内部の“臨床的に意義のある癌” (significant cancer) の局在診断の精度が飛躍的に向上した. 前立腺全摘除術後の摘出標本をみて, 初めて癌局在を認識する時代から, 癌局在とその悪性度を診断してから治療へと進む時代が到来したと言っても過言ではない. 画像診断や生検技術の進歩のみならず, 治療モダリティーも進歩した. 従来は, 前立腺全体を治療した凍結療法, 小線源療法, 高密度焦点式超音波療法は, 長期臨床成績が示されたと同時に, 治療技術や機器の進歩により, 前立腺内部の標的領域を正確に治療可能となった. これら複合的な技術の進歩が融合し, 前立腺癌標的局所療法 (focal therapy) が実施可能となった.

     Focal therapyは, significant cancerを治療する一方, 可能な限り正常組織を温存することで, 癌制御と生活の質の温存を両立する治療戦略であり, 高齢化社会である, わが国における期待は大きい. わが国では, 2016年に前立腺癌診療ガイドラインにおいて, 限局性前立腺癌の治療戦略の一つとして示されたが, 残念ながら現在のところ, 普及には至っていない. しかし, その後に報告された国内外の臨床成績は, その有効性と安全性を期待させるものであった. 現在, 世界的に使用されているfocal therapyの主なモダリティーは, 凍結療法, 小線源療法, および高密度焦点式超音波療法 (high-intensity focused ultrasound : HIFU) であり, わが国では治験, 保険診療, 先進医療として, それぞれ実施されている.

     Focal therapyの実施施設では, 正確な癌局在診断, 正確な治療, そして, 経過観察方法といった課題に挑みながら, 臨床研究に取り組んでいる. 本特集では, わが国において, focal therapyを凍結療法, 小線源療法, HIFUにより実施している3名のエキスパートの先生にfocal therapyの最前線について, 今回お示しいただくこととした.

  • 小路 直
    2023 年 36 巻 2 号 p. 218-224
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     近年, Multi-parametric magnetic resonance imaging (MRI) のsignificant cancer検出における有用性が明らかとなり, MRI-TRUS融合画像ガイド下生検などのMRIガイド下生検により, 高い精度で前立腺内部の癌局在診断が可能になった. さらに, 治療技術の進歩により, Focal Therapyは, 癌制御と機能温存を両立することを目的とした限局性前立腺癌に対する新たな治療戦略として注目されている. 高密度焦点式超音波療法 (HIFU) は, トランスデューサーから強力な超音波エネルギーを焦点領域にエネルギーを集束させ, 組織破壊することで, 治療効果を得るものである. われわれは, これまでHIFUによるFocal therapyを特定臨床研究として実施してきた. これまでの短期臨床成績は, 海外の臨床成績と比較して, 長期成績を期待させるものである. 今後, 多数の患者の長期成績を評価し, 治療機器としての有効性, Focal Therapyの臨床成績を明らかにすることにより, HIFUによるFocal Therapyのモダリティーとして, 限局性前立腺癌の治療戦略の一つとなることが期待される.

  • 松岡 陽, 藤井 靖久
    2023 年 36 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     Focal therapyは, 制癌と機能温存を両立する前立腺癌個別化治療として今後の発展が期待されている. 低線量率小線源療法は, focal therapyの代表的治療手段の一つとして国内外で活用されている. 国内では低線量率小線源療法は標準的前立腺全体治療の一つとして以前から広く施行されており, focal therapyの新規導入に適した治療法であることから, focal brachytherapyとして今後の需要が高まることが期待される. 近年, 低線量率小線源療法によるfocal therapyでは, 病巣の広がりが部分的な中間リスク癌がおもな対象となっており, 治療域と温存域は前立腺生検やMRI所見に基づいて設定されている. 治療後は制癌や各種機能の追跡を行うが, 温熱エネルギーによるfocal therapyと異なり, 治療効果の発現が緩やかであることを念頭に,評価時期を設定することが望ましい.

     Focal therapyでは即時治療不要域を未治療域として存在させており, 必要な時点で部分治療を追加可能とすることを前提としている. 低リスクまたは中間リスク癌を対象としたfocal brachytherapyでは, 無救済治療生存率 (再focal therapyは除外) において, 標準的whole gland治療を行う場合に匹敵する制癌効果を, より良好な機能温存下に得られる可能性も報告されている. エビデンスの蓄積により, 臓器温存局所療法のますますの発展が期待される.

  • 浮村 理
    2023 年 36 巻 2 号 p. 230-234
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     Cryoablation技術は, 経直腸的超音波断層法によるリアルタイム画像ガイダンスの導入, および, 第3世代と呼ばれる高圧ガスの出力調整により, 凍結・解凍で1サイクルとして2サイクルを実施する凍結医療機器の開発により, その安全性ならびに有効性が格段に改善し, 欧米では前立腺全摘除術および放射線治療と並んで保険収載され, 重要な治療選択肢として認知された. さらに, Focal Therapyへの技術革新に, multi-parametric MRIによる臨床的に意義のある前立腺癌病変の可視化, および, MRIと超音波との画像融合生検法の確立がある. これらに支えられ「癌制御と性機能温存・排尿機能温存との両立」を目指すTargeted Focal Cryotherapyの概念が成立した.

総説
尿路結石
  • 筒井 健司, 角田 洋一, 井之口 舜亮, 三木 愛梨, 脇田 哲平, 堀部 祐輝, 谷 優, 蔦原 宏一, 高尾 徹也
    2023 年 36 巻 2 号 p. 240-244
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     今回我々は吸引式の低侵襲経皮的腎砕石術 (mini-PCNL) の有効性を後方視的に検討した. 大阪急性期・総合医療センター泌尿器科にて腎結石に対してmini-PCNLを施行した60例を対象とし, 吸引式シースを使用した32例 : PCNL va (+) 群と, 吸引式シースを使用しなかった28例 : PCNL va (-) 群に分け比較検討を行った. PCNL va (+) 群における手術翌日のstone free rate (SFR) は68.8%であり, PCNL va (-) 群の28.6%と比較して有意に高かった (p<0.01). 合併症の発生率はPCNL va (+) 群で6.3%, PCNL (-) 群で17.9%であった. 吸引式mini-PCNLは合併症の発生を抑え, 高いSFRを得ることができる有効な方法であると考えられた.

  • 大石 真之介, 金澤 耕一郎, 坂本 昭彦, 田邊 邦明, 杉山 和隆, 松本 明彦, 久米 春喜
    2023 年 36 巻 2 号 p. 245-248
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     結石性急性腎盂腎炎でドレナージが必要と判断された重症例において, 術前尿培養と術中腎盂尿培養での原因菌分布および抗菌薬感受性について調査し, 腎盂尿培養の採取による原因菌の同定への影響や, 抗生剤選択の妥当性を調査した. 尿路結石による尿路閉塞を伴う急性腎盂腎炎と診断した症例のうち, 緊急ステント留置を施行した103例を対象とした. 年齢は中央値70歳, 結石長径は中央値8 mmであった. 術前尿培養は84例で採取し, 原因菌の陽性率は65.5% (55例) であった. 術中腎盂尿培養は92例で採取し, 原因菌の陽性率は48.9% (45例) であった. 術前尿培養, 術中腎盂尿培養の両方が提出された例は75例で, 陽性率は70.7% (53例) と最も高く, 両方の検体を採取することが原因菌の同定において有用であることが示唆された.

腹腔鏡手術 (副腎・上部尿路)
  • 小林 秀一郎, 伊藤 将也, 山本 卓宜, 戸出 真宏, 矢野 雅隆, 古賀 文隆
    2023 年 36 巻 2 号 p. 249-254
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】ソフト凝固を用い無阻血かつ腎実質無縫合に施行した腹腔鏡下腎部分切除術 (LPN) のTrifectaの達成率を検討した.

    【対象と方法】cT1腎癌の術前診断で腎部分切除を施行した46例を対象とし周術期成績と安全性を検討した. 術後eGFR低下率が10%未満を腎機能温存とした. 腎部分切除はソフト凝固を用いて無阻血に行い, 腎実質縫合は施行しなかった.

    【結果】腫瘍径の中央値は27 mm, 腎摘除や開腹, 阻血に移行した症例はなく, 出血量は83 mL, 切除断端陽性は1例, 合併症ありは2例であった. 術後eGFR低下率は1.5%で腎機能温存は41例 (89%) であった. Trifecta達成率は83%であった.

    【結論】ソフト凝固を使用した無阻血無縫合LPNは高いTrifecta達成率を得られた.

  • 木藤 宏樹, 中田 多佳子, 加藤 繭子, 菅野 貴洋, 渡部 良一, 赤倉 功一郎
    2023 年 36 巻 2 号 p. 255-260
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     2015年4月から2022年3月までの期間に当院で非転移性腎盂尿管癌と診断された80歳以上の19症例の臨床経過を調べ, 高齢者における腹腔鏡下腎尿管全摘術の有用性を検討した. 手術群12例の年齢は中央値82歳 (80-91), 癌死2例, 他因死1例を認め3年生存率は83.3%, BSC群7例の年齢中央値は89歳 (80-96), 癌死2例があり3年生存率は53.3%であった. BSC群では血尿を4例で認め3例に放射線治療を要したが輸血を必要とした症例はなかった. 84歳以下11例では手術が9例に施行され癌死1例, 3年生存率は87.5%であった. 以上の結果より, 85歳以上の高齢者に腹腔鏡下腎尿管全摘除術の適応を決定する際には身体活動性や社会的背景なども考慮し, 予後延長に寄与する可能性について検討する必要性が示唆された.

腹腔鏡手術 (前立腺・その他)
  • 寒野 徹, 小堀 豪, 小寺澤 成紀, 宗宮 伸弥, 灰谷 崇夫, 長濱 寛二, 伊藤 将彰, 東 義人, 諸井 誠司, 赤尾 利弥, 山田 ...
    2023 年 36 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    (目的) 腹腔鏡下体腔内新膀胱造設術の初期経験を報告する.

    (対象と方法) 2019年以降に3施設で施行した8例 (男性7例, 女性1例) を対象とした. 新膀胱の術式は逆U字型とし, 6ポートで施行した. 回腸を40 cm遊離し, 脱管腔化後, 後壁縫合を行った. 膀胱尿道新吻合は体腔鏡下前立腺全摘除術と同様に両端針の連続縫合とした. 尿管吻合後, 腸管を折りたたむように前壁縫合した.

    (結果) 全例腹腔鏡下に完遂できた. 重篤な術後合併症は腸閉塞を1例に認め, 腹腔鏡下イレウス解除術を施行した. 排尿状態に関しては女性の1例で自己導尿を要し, 1例は全身状態悪化のため尿道カテーテル留置となったが, 他の6例は自排尿可能であった.

    (結語) 腹腔鏡下体腔内新膀胱造設術は縫合量が多いものの, 安全に施行可能であると思われた.

  • 荒木 英盛, 加藤 久美子, 成島 雅博
    2023 年 36 巻 2 号 p. 267-272
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     腹腔鏡下仙骨腟固定術 (LSC) は骨盤臓器脱 (POP) のゴールドスタンダードだが, 手技は多様である. 当院LSC 820例を, メッシュアームの後腹膜化の方式で, 低位ダグラス窩腹膜閉鎖群 (256例) と当院考案の高位腹膜閉鎖群 (564例) に分け後ろ向きに検討した. 腹圧性尿失禁増悪率 (de novo含む), TVT手術移行率は各々19.98%対25.10%, 6.64%対6.56%で有意差はなかった. POP-Q Stage II以上の再発率は6.25%対4 58%で有意差ないが, Stage III以上の再発率は2.70%対0.70%で有意に低下した (p=0.019). 高位ダグラス窩腹膜閉鎖法はメッシュアームに尾側へのテンションがかからず子宮頸部が円滑に挙上できるため, 臨床的に重大なPOP再発を減らせる可能性がある.

前立腺肥大症
  • 桑原 勝孝, 佐藤 毅, 渡邊 望, 中村 健三, 塚本 拓司
    2023 年 36 巻 2 号 p. 273-278
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     前立腺肥大症に対するPVPはTURPと同様の治療効果とより低い侵襲性を持つ手術方法である. しかし, 大きな肥大症においては術後の残存腺腫が大きくなることが欠点であった. 今回, 体積100 mL以上の大きな肥大症症例に対する新機種XPSによるPVP (XPS-PVP) の治療成績を報告する. IPSS, Qmax, 残尿量は術後1カ月目から有意な改善を示し, 術後1年まで改善を維持していた. 肥大の再発から再手術を行った症例は無かった. 旧機種と比較すると照射エネルギー量は有意に増大していたが, 手術時間は短縮されていた. 術中止血の為にTURを用いた症例は減少した. 一方, 前立腺体積減少量は増大した. XPS-PVPはより有効になった蒸散術と考えられ, 大きな肥大症症例に対しての長期成績の改善も期待される.

  • 小田 和也, 小路 直, 宮嶋 哲
    2023 年 36 巻 2 号 p. 279-284
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     ツリウムレーザー前立腺核出術 (Thulium Laser Enucleation of the Prostate, ThuLEP) を施行した前立腺肥大症患者の12カ月間の機能的転帰を評価した. ThuLEPを施行した90人の患者を対象とし, 治療前とその後1, 3, 6, 9, および12カ月目でIPSS, IPSS QOL, OABSSおよび尿流量測定法で評価した. 結果は, 手術時間の中央値は50分, レーザー照射時間の中央値は22分, 切除量の中央値は38 gであった. IPSS, IPSS QOL, OABSS, 最大尿流量および残尿は治療後1カ月で有意に改善し, 12カ月にわたって維持されていた. ThuLEPは効果的な治療法であり, 排尿機能は12カ月間改善が観察された.

その他の領域
  • 北風 宏明, 木山 祐亮, 井之口 舜亮, 松村 聡一, 関井 洋輔, 本郷 祥子, 奥見 雅由, 髙田 晋吾
    2023 年 36 巻 2 号 p. 285-289
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     当院では2018年4月より精索静脈瘤に対して顕微鏡下低位結紮術を導入しているが, 術中の精巣動脈の同定・温存は難易度が高く温存が難しい症例を経験する. 我々は2022年6月から術中に蛍光血管造影剤であるインドシアニングリーン (ICG) を投与し硬性鏡下で動脈を同定・温存する方法 (以下ICG法) を導入し5例に施行した. 従来法の35例とICG法の5例における手術時間・動脈温存本数・術後合併症・治療効果を比較検討した.

     患者背景や手術時間・術後合併症・治療効果では差を認めなかったが, 精巣動脈の温存本数は従来法1.5本 (0本-5本) に対してICG法で3.0本 (2本-4本) であり有意差を認めた.

     ICG法では従来法に比較して精巣動脈の温存本数が有意に多く術中のICG投与は有用であると考えられた.

症例報告
  • 山田 大介, 江本 成伸, 秋山 佳之, 川合 一茂, 山田 雄太, 佐藤 悠佑, 田口 慧, 亀井 潤, 川合 剛人, 高橋 さゆり, 阿 ...
    2023 年 36 巻 2 号 p. 290-295
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     前立腺癌と直腸癌が同時期に発見され, 同日にロボット補助腹腔鏡下手術を施行したので報告する. 症例は80歳男性. 外科医が先行しS状結腸の授動, リンパ節郭清を施行. 大腸内視鏡にて腫瘍を確認しながら肛門側で直腸を離断. 泌尿器科医に交代しレチウス腔を展開. 前立腺摘除, 膀胱尿道吻合施行. ロッコスティッチは尿道背側のデノビエ筋膜と膀胱背側縦走筋束との1層縫合になった. カメラポートの創を延長し前立腺を摘出. 外科医に交代し, 直腸断端を導出し血流を確認後に口側腸管を離断. 再気腹し腸管を端々吻合した. 手術2カ月後には失禁がなく, 最大排尿筋圧48 cmH2O, 肛門最大静止圧/随意収縮圧20/265 mmHgと良好であった. 術後1年半経過しているが, 再発なく, 便失禁なく, 尿失禁なく, 残尿16 mLと順調に経過している.

  • 錦見 俊徳, 森上 裕子, 石黒 茂樹, 大橋 朋悦, 水野 秀紀, 山田 浩史
    2023 年 36 巻 2 号 p. 296-303
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

     64歳, 男性. 前立腺癌に対してロボット支援下前立腺全摘術 (RARP) を施行したが, 術中に直腸損傷を認めロボット支援下に縫合閉鎖を行った. 術後は1週間絶食, 食事開始時に緩下剤を開始した. 術後9日目に尿道カテーテルを抜去し, 術後15日目に退院. 術後21日目から下痢を自覚. 術後26日目の腹部CTにて直腸に液貯留を認め, 膀胱尿道造影では, 尿道吻合部のリークおよび直腸への造影剤の漏出を認めたため, 尿道直腸瘻と診断. 術後4週間以内, 尿性下痢の出現から5日目と早期発見であり, 3カ月間のカテーテル留置にて自然閉鎖を期待する方針となった. 3カ月後の尿道膀胱造影にて尿道吻合部からのリークは認めず, 尿道カテーテルを抜去した. 1年以上経過するが, 尿道直腸瘻の再発を認めていない.

Urologist at Work
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