2024 年 37 巻 2 号 p. 236
泌尿器科領域における骨盤リンパ郭清術において解剖学的な領域の定義はこれまで曖昧であった. 日本内視鏡外科学会 (JSES) によるロボット支援下骨盤リンパ節郭清標準化ワーキンググループが2020年5月から開始され, 各科横断的な解剖構造の情報を共通する作業が行われた. その結果, 消化器外科, 婦人科, 泌尿器科に共通する範囲として, まず骨盤内の閉鎖領域を定義し共通の認識を得ることが出来た. そしてこれを受けて2023年1月に日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 (JSER) でも泌尿器科領域における骨盤内リンパ節郭清範囲の標準化を目指してワーキンググループが発足し, ロボット手術時代の最適な骨盤内リンパ節郭清範囲についてエキスパートによる議論が行われた. そして第37回日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会総会において, 定義された解剖学的区分が発表された.
本ワークショップではまず (1) 鳥取大学の森實修一先生から骨盤内リンパ節の解剖について解説を頂き, 各領域を識別するために血管だけでなく筋肉や筋膜, 神経などをランドマークとすることの重要性が紹介された. 続いて (2) 閉鎖領域の郭清における内側アプローチを愛媛大学の三浦徳宣先生に, (3) 同外側アプローチを大阪公立大学の山崎健史先生に, (4) 外腸骨, 総腸骨領域の郭清を東京大学の山田雄太先生に, (5) 内腸骨領域の定義とアプローチ (閉鎖節摘除先行) を聖路加国際病院の新保正貴先生に, (6) 内腸骨領域先行による郭清を京都医療センターの寒野 徹先生に (7) 仙骨前面領域の郭清を東京慈恵会医科大学の三木淳先生に詳しく解説を頂いた. 各演者のプレゼンテーションでは鮮明なビデオやわかり易い図解が多用されており, 神経や血管損傷を避け安全性を担保するためのエッセンスが凝縮されていた. これらをまとめた本稿は骨盤内臓器手術に携わるすべての泌尿器科医にバイブルとなり得るクオリティーとなっている. 本ワークショップのまとめを通じて, 多くの術者が共通した統一された郭清範囲で郭清を実施していくことにより, 今後, 骨盤内リンパ節郭清の有用性や安全性に関するエビデンスが蓄積されていくことを切に願う.