Japanese Journal of Endourology and Robotics
Online ISSN : 2436-875X
特集4 : 腹部領域のリンパ節郭清は必要?不要?各疾患におけるリンパ節郭清の実際
腹部リンパ節郭清に必要な解剖
塩田 真己松元 崇種子島 時祥塚原 茂大牟田口 淳後藤 駿介小林 聡江藤 正俊
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2025 年 38 巻 1 号 p. 76-80

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抄録

 脊椎動物は, 心血管系と共にリンパ系を形成し体液を循環させるシステムを有しており, リンパ系は末梢組織から中枢の大静脈にリンパ液を輸送する. リンパ液には, 蛋白質などの高分子物質, 組織の代謝産物に加えてリンパ球に代表される免疫細胞が存在し, 感染防御や癌免疫の観点からも重要なシステムである. 癌は主に血行性やリンパ行性転移を来し, リンパ行性転移では原発巣からリンパ管に沿って癌細胞がリンパ節に転移するため, リンパ節転移の診断目的として, 一部の癌では治療目的として, リンパ節郭清が行われる. 副腎癌や腎癌, 腎盂尿管癌, 精巣癌において, 腹部のリンパ節郭清が必要となる場合がある. しかし, リンパ節郭清により, リンパ液の滞留によるリンパ浮腫やリンパ液の溢流によるリンパ瘻, リンパ嚢腫などのリンパ管そのものの損傷による合併症に加え, リンパ管が伴走する動静脈や周囲神経の損傷に伴う合併症が惹起される可能性がある. したがって, 泌尿器癌の診療において必要となる腹部リンパ節郭清には, リンパ管の走行とその周囲の血管, 神経, そして膜構造に関する局所解剖に十分に通じておくことが必要である. 本稿では, 腹部リンパ節郭清に必要な知識について解剖学的事項を中心に概説する.

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© 2025 一般社団法人 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
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