日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
ISSN-L : 1345-7942
原著論文
レモンピールの乾燥時の褐変に対する前処理の効果
La Choviya HAWASuriah Binti ALI藤井 幸江吉本 則子山本 修一
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 15 巻 3 号 p. 181-187

詳細
抄録

レモン製品は褐変しやすいことが知られており,乾燥中あるいは乾燥後の褐変速度を簡便に定量化することは重要である.レモンピールの褐変をデジタルカメラ画像から数値化し,褐変速度の含水率依存性を調べた.これらのデータを基に,乾燥前処理および乾燥条件がどのように褐変に影響を与えるかについて検討した.
市販のレモンの皮を剥き,2.5 cm×0.5 cmにカットした.乾燥前処理として次の2つの手法を行った.
【前処理1(ブランチング)】試料を沸騰水中で5分間煮沸.
【前処理2(糖溶液浸漬)】ブランチング処理した試料を40 wt% Sucrose溶液に10分間浸漬.一定温度,湿度(相対湿度RH<2%)に維持された密閉ボックス内に試料を入れ,対流伝熱により乾燥を行い,経時的に試料重量を測定し,含水率を算出した.
[一定含水率での加熱による褐変実験]試料を任意の含水率まで乾燥し,その後密閉容器に入れ,一定含水率を保ったまま333 Kで加熱した.
[デジタルカメラ画像からの色彩画像解析]デジタルカメラを用いて乾燥または褐変実験後のレモンピールを撮影し,HSL座標系における色彩画像解析を行った.褐変は色相(Hue)H値により定量化できた.他の彩度(Saturation)S,明度(Lightness)Lは有意な値を得ることができなかった.
乾燥実験は303,318,333 Kで除湿状態の乾燥ボックス中で行い,含水率およびH値を乾燥時間の関数として求めた.318 Kの乾燥において前処理1,2は乾燥速度に大きな影響は与えなかった.乾燥時のHは乾燥初期に急激に減少し,その後,減少割合は緩やかとなった.とくに前処理2では,乾燥時間が1時間後はほぼ一定となり,高いH値,すなわち初期の色が保持された(褐変が抑制された).乾燥6時間後のH値を303,318,333 Kについて比較したところ,乾燥温度が高くなるにつれH値が減少した(褐変が進行した).どの温度においても前処理は褐変を抑制した.糖浸漬は乾燥製品の収縮抑制効果が高かった.
褐変速度の含水率依存性を調べるために,あらかじめ一定含水率に調整したサンプルを密閉容器にいれ,333 Kで保持し,H値を測定した.含水率が低いときは,H値は減少せず,褐変速度が著しく遅くなることが明らかとなった.333 Kで6時間保持したときのH値の前処理効果について比較したところ,低含水率における褐変の抑制に加えて,前処理が有効であることが示された.
結論としてレモンピールの乾燥時の褐変をデジタルカメラ画像からH値の減少として数値化して簡便に評価することができた.褐変は乾燥前処理,ブランチングと糖溶液浸漬処理により抑制された.一定含水率の褐変速度は低含水率で著しく遅くなることが明らかとなった.酵素の乾燥では,試料温度が高くならないうちに低含水率にすると活性が保持される.同様に低湿度の熱風により迅速に乾燥すると良好な色彩の乾燥レモンピールを製造できることが示唆された.

著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本食品工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top