日本食品工学会誌
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解説
  • 伊與田 浩志
    2024 年 25 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
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    高温空気からの対流伝熱を利用した加熱は,オーブンや乾燥工程など,食品加工において広く用いられる.その際の空気は,わずかに水蒸気が含まれた湿り空気中で操作されることが多い.空気に含まれている水蒸気量が多く露点温度が食品の温度よりも高い場合は,食品の表面で水蒸気の凝縮(結露)が生じる.さらに装置の庫内温度が沸点温度(大気圧下で100°C)よりも高い場合,空間内は過熱水蒸気のみで満たされた状態にすることができる.この沸点よりも高い温度の水蒸気を過熱水蒸気とよぶ.本報告では,過熱水蒸気とその利用について,熱力学,機械工学と食品工学の学際的な視点から記述する.また,筆者の研究報告から,加熱初期の水蒸気の凝縮と凝縮水の蒸発の一連の過程を推算するために提案した伝熱モデル,ならびに,過熱水蒸気や高温空気による食品乾燥における湿度の影響について紹介する.

  • 河原 秀久, 大石 幸一, 川本 久敏
    2024 年 25 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
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    耐凍性を獲得のために,生物は様々な氷結晶制御物質を生産している.その氷結晶制御物質には,異物で起きる不均質核形成を阻害する過冷却促進物質と微小な氷結晶の成長を抑制する氷再結晶化抑制物質などがある.我々は,食品加工生産時に産生される未利用資源から過冷却促進活性を有する複数のエキスの製造に成功した.それらエキスのうち,最も活性が高いエキスはコーヒー粕エキスであった.さらに,食品加工で生成されるメラノイジン由来の同活性も見出した.エキスの実装化として,果実や野菜の未凍結保存技術の確立を試みた.イチジクの圃場散布により,収穫したイチジクは,-2°C下での15日間保存で,未凍結状態となり,小売り限界が5日間から15日間に延長された.さらに,レタス水耕栽培において,コーヒー粕エキスと味噌エキスの混合液を吸収させると,収穫したレタスは0°C以下で2週間ほど未凍結保存できることに成功した.

原著論文
  • 野崎 晋也, 吉本 則子, 山本 修一
    2024 年 25 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
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    逆相クロマトグラフィー分離の生産性を最大化する,最適温度の決定法を開発した.エタノール-水移動相を用いたポリマー(ポリスチレンジビニルベンゼン)粒子充填クロマトグラフィーによる2種類のポリフェノール(カテキン,エピカロカテキンガレート)分離をモデル系として選択した.15-45°Cにおける勾配溶出実験と等組成溶出実験データから,分配係数と拡散係数を温度とエタノール濃度の関数として定式化した.

    既に開発した等分離度曲線決定方法を温度の影響を考慮できるように拡張した.温度が高くなると分離溶媒量が減少し分離時間が長くなり,温度が低下すると分離時間は短縮されるものの多量の溶媒が必要であることが明らかとなった.

    次に分離度が一定の条件下において,カラム体積,時間,消費移動相当たりの生産性を計算したところ,生産性が最大となる温度が存在し,また温度は移動相エタノール濃度にも依存した.この方法により試料の安定性等を考慮して最適温度条件を決定することができる.簡単に液体クロマトグラフィーの最適温度を決定できる本手法は,産業上有用であると考えられる.

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