日本食品工学会誌
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解説
食用ナノ/マイクロ分散系の作製と利用に関する研究
黒岩 崇
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2017 年 18 巻 4 号 p. 161-167

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抄録

食品を構成する生体分子の自己組織化・複合化現象を利用した食用ナノ/マイクロ分散系の作製と利用に関する著者らの研究成果を概説する.本稿では,(1)キトサンと両親媒性脂質分子の複合化によるサブミクロン微粒子の作製,(2)正または負の電荷を有するイオン性多糖を利用した水中油滴型エマルションの安定化,(3)機能成分を高効率で内包可能な脂質分子集合体作製法の開発,(4)可食性の生体高分子を利用した均一径マイクロスフィアの作製,について概述した.分子間相互作用に基づく生体分子の集合化・複合化現象を利用することで,シンプルな作製工程により,過剰なエネルギー投入を必要とせず,食品の構成成分への物理化学的ストレスを最小限に抑え,かつ有害な薬品を使用せずに食品素材のナノ/マイクロ加工が実現できる.また,構成分子の選定に加え,温度や濃度,混合比などの作製条件により,粒径,表面電位,分散安定性,および物質内包/放出特性といった分散系の特性を制御することも可能であることが示された.

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© 2017 一般社団法人 日本食品工学会
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