高品質な殺菌ホール卵を得るため,通電加熱の利用を目指した.20 kHzの通電加熱装置で割卵後のホール卵を加熱すると,部位によって極端な昇温ばらつきが生じることが確認された.卵を構成する各要素の電気特性と,電流の向きに対する各要素の配置が,昇温速度に影響を及ぼすと考えられた.そこで,ホール卵を構成する卵白,卵黄(卵黄膜あり,卵黄膜なし),および液卵の導電率を通電加熱装置とLCRメータを用いて10℃から90℃の温度範囲で測定した.その結果,いずれも温度上昇に伴い導電率が指数関数的に上昇することおよび50/60 Hzの低周波域より20 kHzの高周波域では,抵抗値は小さくなりかつばらつきがなくなることが確認できた.さらに卵黄膜の導電率を推算すると,50℃において0.12 S・m-1と著しく小さく,卵黄膜はホール卵の通電加熱特性に大きな影響を与えることがわかった.