日本食品工学会誌
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日本の食料自給率と二酸化炭素排出量の相関関係について
宮脇 長人上西 浩史澤田 圭司相良 泰行大久保 明
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2003 年 4 巻 4 号 p. 131-136

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抄録

産業連関表に基づくLCAインベントリーデータによる, 各産業部門ごとの炭素排出係数を用いて, わが国の食料自給率とCO2排出量との相関について検討を加えた.自給率xiである食料品目iの総消費に関わる炭素排出量は, (1) 自給率xiの品目iの国内純生産, (2) 不足分 (1-xi) を輸入するために, トレード・オフする工業製品jの生産, (3) 食料品目iの輸入と工業品目jの輸出による輸送に関わる炭素排出量の総和となる.このモデルに基づき, 食料iの不足分を工業製品jの輸出で補う際の2の自給率を考慮した, 食料iの全原料消費にかかわる有効炭素排出係数σeff, i, jを求め, また, これを工業製品jの輸出比率に応じて加重平均した, 食料品目iに関する有効炭素排出係数σeff, iを求めた.σeff, iおよびiの総消費量より, 食料品目iごとの現状における炭素排出量を計算した.その結果, 食料自給率の低下 (~40%) により炭素排出量は大きく増大していること, わが国の食料自給率を炭素排出量ベースに換算するとわずか13%余りでしかないこと, 食料完全自給時と現状との炭素排出量の差は京都議定書目標水準以上にあることが明らかとなった.このことは, 産業構造転換により食料自給率を上げることが, わが国におけるCO2排出量削減のための重要な選択肢であることを意味するものである.

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