環境中に浮遊する微生物を含む空気の清浄度管理の方法として, その直接的な測定は, 培養含めそのハンドリングに多くの手間を要する.一方, 浮遊微粒子と浮遊微生物の濃度関係から, 浮遊微粒子濃度を測定して, 浮遊微生物濃度のモニターとして使用する方法は, 1) 測定が簡便なこと, 2) リアルタイムの測定が可能なこと, さらに, 3) NASA規格に記載されたデータが, 広範な空気の清浄度を管理する環境に適用できると考えられてきたこと等によって利用されてきた.
しかし, 浮遊微粒子濃度と浮遊微生物濃度をNASA規格と同様の方法で比較して見ると, 必ずしも同規格と同様の結果になるとは限らないことが近年明らかになりつつある.これは四季により, 環境条件が大きく異なる日本国内においては, その傾向が顕著になるとも言われている.
こうした状況を踏まえ, 浮遊微粒子濃度を気中の浮遊微生物濃度のモニターとして利用する場合, 浮遊微生物の粒径分布特性上の観点から調査を行い, 浮遊微生物の濃度分布特性が, 気中に浮遊する一般的な微粒子濃度分布として認知されているJunge分布とは大きく異なり, ある粒径域を中心に対数正規分布に近似した分布であることが分かった.
また浮遊微生物濃度と浮遊微粒子濃度の関係は, 測定個所域で考えれば, 高い相関関係が得られると推測され, 浮遊微粒子濃度により浮遊微生物濃度を管理する有効性を示唆できた.