日本食品工学会誌
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膜分離技術を用いたエタノール濃縮プロセスの最適化
鍋谷 浩志紙谷 進岩本 悟志萩原 昌司中嶋 光敏
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2007 年 8 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

エタノールの効率的な濃縮プロセスの提案を目的として, 種々の分離特性を有する逆浸透膜を組み合わせた多段逆浸透濃縮プロセスの性能をシミュレーションにより評価した.初期濃度5wt%の原料を96wt%にまで濃縮し, その際の回収率が95%以上となることをプロセスの性能条件とした.水およびエタノールの透過流束の算出には, 溶解拡散理論に基づく膜透過の輸送方程式を用いた.シミュレーションに基づき濃縮に必要なエネルギおよびコスト (膜コストおよびエネルギコスト) を算出し, コストが最小となるよう濃縮プロセスの最適化を試みた.水選択透過膜とエタノール選択透過膜とを組み合わせた3段濃縮プロセスの場合においては, 現在開発されている最高性能の膜の分離係数を想定して最適化したプロセスでの所要エネルギは, 2.14 MJ/kgとなり, 蒸発法での値の4分の1程度にまで低減することができた.また, この際の所要コストは3.15円/kgとなった.膜の分離係数をさらに向上させた場合についても検討を行ったが, 分離係数の向上は所要コスト低減に対する効果をほとんど示さなかった.4段濃縮プロセスとすることにより, 所要エネルギおよび所要コストをさらに30%程度削減することが可能であった.

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