日本食品工学会誌
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圧力酵素分解技術の実用化および同装置の開発
岡崎 尚野口 賢二郎
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2008 年 9 巻 4 号 p. 239-250

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抄録

1990年代以降, 日本に続き欧州, 米国で静水圧を利用した食品の加工技術が研究された.筆者らも静水圧の研究を開始したが, 実用的な観点から特に100MPa以下の比較的低い静水圧の利用を考えた.その結果, 微生物の発育を抑制できる静水圧は, 微生物の種類によって異なるが, 40-70MPaの範囲にあった.例えば, 酵母, 乳酸菌, 枯草菌はそれぞれ40MPa, 70 MPaおよび50MPaで発育が抑制された.これらの静水圧による微生物の発育抑制を, 魚の自己消化に適用した.カタクチイワシ, イカ肝臓およびナマコ内臓の自己消化を静水圧下で行ったところ, それぞれの素材は腐敗を抑制しながら自己消化が非常に速く進行することがわかった.それぞれの分解液の全窒素, フォルモール態窒素および全アミノ酸は, 20%食塩を添加して行う従来の方法と比較して高い濃度となった.静水圧下での魚介類の自己消化を実施することのできる装置は東洋高圧 (株) (広島) で開発され, この装置によって, 圧力酵素分解技術を行うことが可能となった.本技術が今後様々な水産魚介類で実施されることを期待する.

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