2014 年 78 巻 1 号 p. 13-27
長崎県大村湾内の西彼地区において,人工的な湧昇によりマガキ養殖場の環境改善を試みた.2011年と2012年の夏季に海底から曝気を行った.水温,塩分,溶存酸素濃度,クロロフィルa濃度,懸濁態物質などの海洋環境とマガキの成長,生残,コンディションインデックス,グリコーゲン含有量などの生態学的状態を毎月調べた.曝気により,特に夏季の初めには,曝気点付近で約1°C程の水温低下,上層への栄養塩供給,珪藻の増加などの養殖場の環境改善が見られた.溶存酸素濃度は10月(秋季の初め)に増加した.マガキのコンディションインデックスは,曝気地点からの距離と負の相関があった.しかしながら夏季には高水温と貧酸素状態を解消するほどには至らなかったため,マガキの生育状態の指標となるコンディションインデックスやグリコーゲン量が9月には低下した.曝気によって夏季の貧酸素や高水温状態を解消させることができれば,この方法はマガキ養殖場の環境改善に役立つ有用なツールになると考えられる.