プラスチックなど海洋ゴミによる汚染が世界的な問題となっているが,鯨類でも摂食(誤食)を通した直接の影響が懸念されている.また食物連鎖を通した濃縮により,鯨類は海洋汚染の指標動物としての有用性も注目されている.本研究では,鯨類による摂食実態とその研究動向を把握するため,国内外の文献を網羅的に調査し,研究対象種,海域,漁具との関連,死因分析について整理した.また,鯨類による海洋ゴミ摂食の実態把握に向けた今後の調査体制構築に不可欠なコンタミネーション(汚染)対策についても重点的に整理した.また過去に商業捕獲された鯨類各種の調査記録を再分析した結果から,日本近海における鯨類の海洋ゴミ摂食実態についても報告する.
三河湾北西部に位置する一色干潟において漁業生産回復を目的として実施された下水処理水中のリン濃度の増加運転が,本干潟のノリの色調およびアサリの現存量に及ぼす影響について調査を行った.下水処理場に近い調査点では栄養塩濃度が高く,ノリの色調は良好だった.また,リン増加運転を開始した月は植物プランクトンを主体とする懸濁態有機物の濃度が上昇した.増加運転を10月から開始した2018–2019年度に比べ,9月から開始した2020–2021年度はアサリの秋冬季減耗が軽減された.これらの結果は,下水処理水中のリン濃度の調整によって,アサリの資源量を増加できる可能性があることを示唆している.
茨城県のイセエビは2010年代後半から漁獲量が急増しており,資源管理方策検討のための生物学的情報が求められている.本研究では,2023年の市場調査と2013–2023年の水揚記録を基に頭胸甲長組成と成熟状況を調査した.その結果,雌雄とも測定個体の75%が頭胸甲長63 mm以上で,他の主要産地より大型で高齢と推測される個体の漁獲割合が多いことが示された.また,雌の50%成熟頭胸甲長が52.9 mmであること,2年以上産卵を経験して漁獲される個体が多いことが示された.2023年の市場調査では抱卵個体が6–9月に確認されたが,2013–2023年の水揚記録と海水温データの解析からは,水温の高低によって年ごとの抱卵時期が大きく変化し,近年の海水温上昇に伴い,抱卵時期の早期化と長期化が起こっていることが示唆された.産卵期が変動するという本海域に生息するイセエビの特徴に合わせた管理方策が必要である.