ブリ稚魚は海面養殖の天然種苗として利用されてきたが,初期成長を支える餌料源に関する情報は少ない.本研究では,安定同位体比およびメタバーコーディング解析により,薩南海域に来遊するブリ稚魚の初期成長を支える餌生物および餌料源を明らかにした.ブリ稚魚の筋肉組織の炭素・窒素安定同位体比は,黒潮域の水柱内に分布する動物プランクトンおよびブリ稚魚以外の仔稚魚と近似した.ブリ稚魚の消化管内容物から検出された遺伝子では,カラヌス目カイアシ類が最も優占し頻出する餌生物であった.小型稚魚ではポエキロストム目カイアシ類,大型稚魚では尾虫類・毛顎類がこれに次ぐ餌生物であった.また,消化管内のカラヌス目カイアシ類が増加すると,ブリ稚魚の成長指数も増加する傾向を示した.これらの結果は,流れ藻に随伴して薩南海域に来遊するブリ稚魚が,流れ藻の葉上動物ではなく水柱内の動物プランクトンを餌料源として成長することを示唆する.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら