三河湾におけるアサリ資源の減少要因を検討するため,アサリの殻形態や生理状態に関する調査を行うとともに,水質との関連を解析した.試料採取は2020年から2023年に三河湾において物理的攪乱から保護される礫漁場において行った.殻長,殻高,殻幅,軟体部重量を測定し,殻の形態(丸形指数,縦型指数,殻厚指数)及び肥満度を算出した.殻付き湿重量に比べ軟体部重量は季節的な変動が大きかった.肥満度には季節的な変化が見られ,春に上昇し秋に低下した.水温を共変量として肥満度に与える各水質の影響について重回帰分析を行った結果,肥満度にはクロロフィルa濃度が正の効果を及ぼした.肥満度の変化にはサイズ依存性が見られ,大型個体は小型個体と比較して肥満度が低水準である期間が長く,特に秋冬季の値が低かった.このことから,クロロフィルa濃度が低下している近年の漁場環境においては,大型個体は餌不足に陥りやすいために秋冬季の減耗リスクが高くなりやすく,漁獲資源量の減少と関連する可能性が示唆された.