2016 年 80 巻 3 号 p. 199-206
海洋生態系と社会環境が人間の福利に与える影響を定量評価し,その構造を可視化することを目的として,ミレニアム生態系評価で定義づけられている福利の5つの要素(安全,快適な生活のための基本的資材,健康,良好な社会関係,選択と行動の自由)に対する満足度をアンケート調査するとともに,東アジアで水産業が盛んな3国(日本,韓国,インドネシア)の間で国際比較を実施した. 5つの要素は独立的ではなく,互いに影響を及ぼしあう構造を有しており,その構造は3国間で基本的には共通しているものの,各要素間の影響度は国により異なっていた.海洋生態系から享受する福利を高めるためには,特に日本と韓国では「良好な社会関係」が,インドネシアでは「健康」が重要であり,このような差を反映した保全の議論が重要である.