2021 年 85 巻 4 号 p. 191-196
本研究では,約60年にわたる長期間の漁獲量と海洋環境データに基づき,太平洋沿岸日向灘を漁場とする宮崎県におけるマダイの長期的な漁獲量変動の要因を考察した.宮崎県のマダイ漁獲量は,1950, 1970, 2000年代後期以降に負偏差,1960, 1980年代から2000年代前期に正偏差となった.宮崎県のマダイ漁獲量は,底層冷水と同期する細島潮位が低下して,おおよそ同期から数年後にそれぞれ増加した.日向灘におけるマダイ漁獲量の2つの増加機構の仮説を示す.1つ目は,日向灘では,栄養塩豊富な底層冷水が進入した後,基礎生産の向上に伴って餌環境が向上し,若齢魚と肥満度の増加により漁獲量が増加する.2つ目は,太平洋から豊後水道に栄養塩豊富な底層冷水が進入し,豊後水道東部では,基礎生産の向上に伴って餌環境が良くなり,マダイ資源が増加する.その後,日向灘へ南下することで,豊後水道東部での漁獲量増加の約2年後に主に日向灘北部の漁獲量が増加する.