抄録
2005年春に, 中国福建省から養殖種苗として輸入されたカンパチ幼魚にアニサキスの寄生が高頻度に見られた。この寄生虫は, 形態学的にはヒトアニサキス症の原因となるAnisakis I型幼虫と同定された。ITS1-5.8S rRNA-ITS2領域の塩基配列では, 広義のA. simplex を構成する種の一つであるA. pegreffii と極めて近縁であった。主な寄生部位は胃壁および胃漿膜であり, 腹部の筋肉に虫体は認められなかった。本症例は, 養殖魚におけるアニサキス寄生の初めての例である。