2021 年 49 巻 6 号 p. 426-432
比較的頻度の低いM1部に発生した中大脳動脈瘤に対してクリッピング術を行った12例について,後方視的に検討した.中大脳動脈瘤全体中,M1動脈瘤はやや年齢が高く,女性に多く,左側に多く,動脈瘤のサイズが小さく,破裂例では脳内血腫を伴いやすく,多発例の少ない傾向を認めた.破裂瘤は未破裂瘤より大きい傾向がみられ,5mm以上の80%は破裂し,5mm未満では14.3%しか破裂していなかった.動脈瘤の向きは,上向き5例,下向き5例,前後向き各1例ずつであり,上向きの5例中3例はearly frontal branch,1例ずつのearly temporal branchとlenticulo-striate artery,下向きは全例early temporal branchとの分岐部であった.破裂例中上向きの2例,下向きの1例に脳内血腫を伴っていたが,上向きの2例では前頭葉あるいは前頭葉と側頭葉,下向きの1例では側頭葉に血腫が存在した.未破裂M1動脈瘤の予後は,M1-M2分岐部動脈瘤と同等の結果であった.破裂例については,前者に脳内血腫を伴う例が多かったことから術前gradeの不良なものが多かったが,予後に大きな差を認めなかった.M1動脈瘤は症例に応じて,クリッピング術,血管内手術両方を用いて十分に戦略を立てて治療を行うべき疾患であると考えら