魚病研究
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アコヤガイ赤変病:20年間の真珠産業への影響
良永 知義花見 梢
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2018 年 53 巻 4 号 p. 136-138

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抄録

アコヤガイ赤変病は1996年に全国の真珠母貝・真珠養殖場で顕在化し,アコヤガイの大量死をもたらした。本疾病の病原体はいまだ明らかにはなっていないが,疫学的調査から,中国産アコヤガイの輸入とともに侵入したと考えられている。中国産アコヤガイと日本産アコヤガイの交雑家系を用いることにより,当初は真珠の品質の低下をもたらしたものの,本疾病の発生は大きく減少した。本疾病発生後20年の間に,真珠の生産量・生産額は激減するとともに,真珠養殖経営体数・就業者数ともに大幅に減少し,多くの雇用が失われた。生産額は2009年のリーマンショックによる価格低下に伴って半減した後,徐々に回復の傾向を示しているが,生産量の回復は見られていない。また,かつて真珠輸出国であった日本は,今日では輸入国に転換している。このように,海外から侵入した本疾病は,日本の真珠産業衰退へとつながった。

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© 2018 日本魚病学会
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