2020 年 55 巻 3 号 p. 88-90
これまで国内外の養殖クロマグロにおいてハダムシが寄生した例は報告されていない。2020年1月に鹿児島県奄美諸島にて養成中のクロマグロ親魚の衰弱個体にハダムシの寄生が確認され,形態的特徴と遺伝子解析の結果Neobenedenia girellaeであると同定されたので報告する。本種は宿主特異性が低く,多くの海産養殖魚に寄生するが,これまで寄生が著しいカンパチと同一海域で飼育されているクロマグロでもみつかったことは無く,世界的にもマグロ類における寄生例はない。今回の事例によりN. girellaeがクロマグロにも寄生することが初めて明らかとなったが,何らかの要因で衰弱した個体で発生した例外的な寄生だと考えられた。