抄録
伝染性膵臓壊死症ウィルスに不顕感染しているカワマスと同ウィルスに持続感染している細胞株について感染の持続性を検べた。外見症状あるいは細胞変性効果(CPE)を示さずに101.6~106.0TCID /g(ml)以下の感染性ウィルス粒子を放出することが,一方は生体内,他方は試験管内の現象ではあるが,両者に共通する特徴である。ウィルスを放出している細胞数は持続感染細胞株でも不顕感染カワマスの腎組織でも構成細胞め1%以下であった。試験管内ではウィルスの持続感染に対する抗体の関与は認められず,また,生体内ではその役割は詳かでなかった。供試された2株の持続感染細胞株からも,また,不顕感染カワマスの血清からも,インターフェロンは検出されなかった。2つのうち1つの細胞株には,そのかわり,感染したウィルスの増殖およびそれによって惹起される細胞融解を妨げる能力をもつIDウィルス(欠陥干渉ウィルス)が存在し,ウィルスの増殖を制御していた。持続感染細胞と不顕感染カワマスにおけるウィルスの持続感染に類似性がみられたことはウィルスと細胞との問の相互作用が試験管内でも生体内では同じであることを示唆するものと思われた。