魚病研究
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ブリ連鎖球菌の特性
楠田 理一川合 研児
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1982 年 17 巻 1 号 p. 11-16

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抄録
 ブリの連鎖球菌症は1974年の夏以来,全国各地の養殖場で多発するようになり,その被害は年々増大する傾向にある。本症の予防や治療法を確立するためには,その病原菌の特性を知る必要がある。そこで,ここでは本菌の発育性状,海水中における生存性,養殖漁場における分布,病魚の体内における分布,菌体産生毒素の感染におよぼす影響などについて述べた。本菌の発育可能な温度域は10~45℃で,20~37℃が至適温度である。発育可能な食塩濃度域は0~7.0%で,0%.が至適塩分濃度である。発育可能なpH域は3.5~10で,7.6が至適pHである。本菌の海水中での生存性は長く,養殖場の海水では25℃で42日以上生存する。また,本菌は夏の高水温期や連鎖球菌症の流行期には海水中,海底泥中および養殖場に野生するマサバやウマズラハギなどの腸管から検出される。自然感染魚におけるStreptococcus sp.は腎.臓・脾臓・腸管から多く検出される。とくに,重症魚では腸管から多く検出されることから,腸管は本症が進行していくうえで重要な役割を果しているものと思われる。本菌の産生する毒素のブリに対するLD50は体重10gあたり内毒素で32mg,外毒素で79mgで,内毒素の致死性が高い。しかし,外毒素は本菌の活性を高め,本症の発現に大きく関与する。
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© 日本魚病学会
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