抄録
神奈川県三浦半島三戸産の海産巻貝ナガニシの中腸腺からAcanthocolpidaeに属すると推測されるセルカリアを検出し,新種と認めてCercaria itoi sp. nov.と命名記載した。本種は眼点を有する大形のセルカリアで,細長い尾を有する。口吸盤,腹吸盤,咽頭がよく発達している。侵入腺細胞は5対であり,体側の3対と体中央寄りの2対の2群に分けられる。排泄嚢は長い嚢状である。66対の炎細胞が観察された。被嚢腺と考えられる桿状あるいは湾曲した桿状の小体が後体部背側に充満している。単性虫はレディアであり,セルカリアは未成熟の状態でレディアから出て,宿主の中腸腺の中で成熟する。