1981年9月,北海道の南東沖合で漁獲されたサンマCololabis sairaに橈脚類Pennella sp.(サンマヒジキムシ,新称)の寄生が確認された。従来,Pennella属のサンマへの寄生は北米西岸沖合域のものに限られていたため,1981年と翌1982年の両年にわたり,北西・中央太平洋とオホーツク海の58点より4588尾のサンマを得て,その寄生状況を調べた。その結果,サンマヒジキムシの寄生を受けたサンマは,これらの海域に広く分布することが判明した。虫体は宿主の筋肉中に体前部を穿入させ,一対の長い卵嚢を付けた黒色の胴部を宿主の体外に露出させていた。北西太平洋における本種の寄生率は1981年には0.7%と低かったが,1982年には8.1%と上昇し,最近,本種の個体群が増大していることが示唆された。また,過去の調査でサンマに本種の寄生を認めなかったのは,寄生率の低さに原因すると考えられた。被寄生魚一尾当りの寄生数は最高6虫体で,平均1.00~1.32虫体であった。
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