魚病研究
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傷アワビ症に関する研究―II
原因菌の分離と復元試験
松永 順夫
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1967 年 2 巻 1 号 p. 11-21

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抄録

 自然感染症および人工感染症アワビの病変部より菌検索を行ない,その分離菌株について形態,生化学的性状ならびに復元実験を行なった結果,次の成績を得た.1)患部周縁から分離することにより,常にほぼ純粋に一種の菌が分離された.分離菌の集落は3%食塩加培地によく発育,35℃,18時間培養により3mm大の集落を形成,集落は正円形,中央部が僅かに隆起,黄色を帯び,半透明で表面はやや乾燥している.2)本菌はグラム陰性で,長さ2.0~2.2μ,巾1.0~1.2μ,多形性を示す短桿菌であり,菌体の3~4倍程度におよぶ一端一毛性の鞭毛を有する.3)本菌は,25~40℃でよく発育する。至適食塩濃度は2.5~3.0%である.至適発育pHは7.0~8.0と推定され,pH値5.35~10.30で発育する。4)本菌は形態および生化学的性状から好塩性ビブリオと考えられるが,V.alginolyticus,V.parahaemolyticusなどとは性状の点で相違する.5) マウスに対する毒性は認められなかった.6)本菌接種により傷アワビ症を再現せしめることができた.いっぽうヒト由来のV.parahaemolyticus,V.alginolyticus接種でも再現されたが,本菌のみが自然発症アワビから分離される事実と併せ考えると,それが現在における主要原因菌と判断される.

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