抄録
1985年6月下旬から8月下旬にかけて, 京都府下のY漁港内で飼育していたアワビ稚貝に高率の斃死を伴う疾病が発生した。各稚貝に共通して見られた所見は外套膜と上足の萎縮および貝殻辺縁部の融解・崩壊・欠損などであった。本疾病による斃死率は49.1%に達したが, 水温が25℃を越えるに伴い終息した。飼料が斃死原因とは考えられなかった。病理組織学的に検討した結果, 本病の原因は神経幹と足側神経横連鎖に生じた腫瘍によるものと判断された。しかし, その成因ならびに病態の詳細に関しては不明であり, 今後検討する必要がある。