魚病研究
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IPNウィルスおよびIHNウィルスに対する消毒剤の効力評価法に関する検討
サケ科魚類の伝染性病の消毒法に関する研究1
井上 潔池谷 文夫山崎 隆義原 武史
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1990 年 25 巻 2 号 p. 69-79

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抄録

 魚類ウイルスに対する消毒剤の効力評価法および供試細胞について検討した。供試した消毒剤はハロゲン系消毒剤, エタノール, プロパノール, 石炭酸, クレゾール石鹸, 塩化ベンザルコニュームおよびホルマリンである。実験にはIPNV (Buhl株) とヤマメから分離したIHNV野生株 (HV7601) を使用した。効力評価に使用する株化細胞について検討したところ, ウイルスの増殖, 分離, 定量にIPNVではCHSE-214細胞, IHNVではEPC細胞が適していた。ウイルス液の調製法に関する検討では, まず消毒剤の活性阻害の少ないウイルス液を調製することを目的に, 細胞内ウイルス (CAV) 回収法を検討し, IPNVはCHSE-214細胞に接種し15℃で12~13時間培養後に, IHNVはEPC細胞に接種し15℃で15時間培養後に凍結融解法によって効率的なウイルスの回収が可能であることが解った。PVP-I沃度を用いて消毒剤の活性阻害の程度を検討したところ, CAV液は培養液中に遊離したウイルス (FV) を濃縮精製したもの (FV濃縮液) に比べると, 活性阻害が認められたものの, FV液に比べると活性阻害ははるかに少なく, CAV液調製法の簡便性を考慮するとCAV液が消毒剤の効力評価実験に適すると考えられた。CAV液は高い感染力価を示し, IPNVでは-20および-80℃の凍結保存によって, 感染力価に変化は見られなかったが, IHNVでは凍結保存により感染力価が低下する事が明らかになった。IHNVおよびIHNVの適温範囲が低いことから, 消毒剤の効力評価には15℃が適していると考えられた。消毒剤の細胞に対する毒性除去はハロゲン系消毒剤では0.1Mのチオ硫酸ナトリウム溶液による中和によって可能であったが, その他の消毒剤ではPBS (-) による希釈が有効な毒性除去法であると考えられた。

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