魚病研究
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25 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 楠田 理一, 平 啓史
    1990 年 25 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     ウナギをE.tardaで免疫して血清の凝集抗体価, 腎臓中の貪食細胞の本菌に対する遊走能, 貪食能, 貪食能に及ぼす血清のオプソニン効果および殺菌能について調べた。その結果, 血清の凝集抗体価は免疫1から3週間後に急激に上昇した。血清の非存在下における貪食細胞の遊走能は免疫3週間以降に上昇し, 貪食能は3週間後とくに高い値を示した。また, 貪食能に及ぼす血清のオプソニン効果も認められた。免疫5週間後の供試魚の貪食細胞の殺菌能は変化しなかったが, 免疫血清との協同作用によって増強されるものと考えられる
  • 草刈 宗晴, 浦和 茂彦
    1990 年 25 巻 2 号 p. 59-68
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     北海道各地においてヒラメ未成魚を飼育中に有限側皮膚が潰瘍症状を呈する疾病がしばしば発生した。飼育実験の結果, 本病は寄生性鞭毛虫Ichthyobodo sp.の大量皮膚感染によって起こったことが判明した。感染魚は最初粘液を大量分泌し, 粘液細胞数が減少して表皮細胞が過形成された。寄生数が増加すると共に, 立鱗が起こり表皮層の剥離と崩壊出血, さらに表皮のひだ構造の消失と真皮海綿層での膠原細胞の出現がみられ, やがて表皮細胞が懐死し, 浮腫が認められて感染魚は瀕死状態となった。皮膚の破壊による浸透圧調節の失調が死亡原因と推定される。
  • サケ科魚類の伝染性病の消毒法に関する研究1
    井上 潔, 池谷 文夫, 山崎 隆義, 原 武史
    1990 年 25 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
     魚類ウイルスに対する消毒剤の効力評価法および供試細胞について検討した。供試した消毒剤はハロゲン系消毒剤, エタノール, プロパノール, 石炭酸, クレゾール石鹸, 塩化ベンザルコニュームおよびホルマリンである。実験にはIPNV (Buhl株) とヤマメから分離したIHNV野生株 (HV7601) を使用した。効力評価に使用する株化細胞について検討したところ, ウイルスの増殖, 分離, 定量にIPNVではCHSE-214細胞, IHNVではEPC細胞が適していた。ウイルス液の調製法に関する検討では, まず消毒剤の活性阻害の少ないウイルス液を調製することを目的に, 細胞内ウイルス (CAV) 回収法を検討し, IPNVはCHSE-214細胞に接種し15℃で12~13時間培養後に, IHNVはEPC細胞に接種し15℃で15時間培養後に凍結融解法によって効率的なウイルスの回収が可能であることが解った。PVP-I沃度を用いて消毒剤の活性阻害の程度を検討したところ, CAV液は培養液中に遊離したウイルス (FV) を濃縮精製したもの (FV濃縮液) に比べると, 活性阻害が認められたものの, FV液に比べると活性阻害ははるかに少なく, CAV液調製法の簡便性を考慮するとCAV液が消毒剤の効力評価実験に適すると考えられた。CAV液は高い感染力価を示し, IPNVでは-20および-80℃の凍結保存によって, 感染力価に変化は見られなかったが, IHNVでは凍結保存により感染力価が低下する事が明らかになった。IHNVおよびIHNVの適温範囲が低いことから, 消毒剤の効力評価には15℃が適していると考えられた。消毒剤の細胞に対する毒性除去はハロゲン系消毒剤では0.1Mのチオ硫酸ナトリウム溶液による中和によって可能であったが, その他の消毒剤ではPBS (-) による希釈が有効な毒性除去法であると考えられた。
  • サケ科魚類の伝染性病の消毒法に関する研究2
    井上 潔, 池谷 文夫, 山崎 隆義, 原 武史
    1990 年 25 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
    The virucidal activities of ethanol, methanol, propanol, phenol, cresol, iodophor and chlorine were examined. Infectious pancreatic necrosis virus (IPNV) was inactivated by ethanol, methanol, cresol, iodophor and chlorine but was not inactivated by propanol or phenol. Inactivation of IPNV required long-term exposure to a high concentration of cresol. Iodine and chlorine effectively inactivated IPNV suspended in PBS (-). The virucidal activities of ethanol, cresol, iodophor or chlorine were eliminated in the presence of organic substances.
  • 江草 周三, 前野 幸男, 反町 稔
    1990 年 25 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
     近年日本沿岸各地でよく見られるボラの鱗の表面にシストを形成する粘液胞子虫を新種として記載した。本種は鱗の頂部の表面に大きい平たい楕円形のシストを形成する。シストを構成する栄養型は多形であるが, 複雑に湾曲分枝する菌糸状のものが多い。胞子は先端がやや尖った楕円形で厚い粘液につつまれる。各寸法の平均値(μm)は長さ8.6, 幅6.8, 厚さ5.1;極嚢は長さ4.4, 幅2.2.魚の鱗寄生既知Myxobolus 3種とは寄生場所, シスト, 栄養型および胞子の形態が明らかに相違する。
  • 梶田 陽一郎, 酒井 正博, 厚田 静男, 小林 正典
    1990 年 25 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     ニジマスの腹腔内にレバミゾール(0.5mg/kg)を一回投与し, 14℃で5日間飼育した後, Vibrio anguillarumのLD50を求めたところ, 対照区の約50倍の抵抗性を示した。レバミゾールは, ニジマス白血球の貪食能, P815細胞障害活性を有意に高め, さらにV.anguillarumを殺菌するには至らなかったが, 血清中の補体価を高めた。したがって, これらの免疫能が高まることによってV.anguillarumに対する感染防御能を得たと考えられ, レバミゾールのニジマスにおける免疫賦活剤としての可能性を示した。
  • 許 康俊, 河西 一彦, 若林 久嗣
    1990 年 25 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     間接蛍光抗体法を用いて, 1986年から1989年までの4年間東京都水産試験場奥多摩分譲の養鱒池で細菌性鰓病の発生・経過を調査した。毎年5月から8月にかけて供試魚の鰓と体表面からFlavobacterium branchiophilaが検出され, 感染が確認された。また, 飼育魚群に鰓病の病徴が現れる前に本菌が検出されたことにより, 本病の発生を予知することができた。さらに, 感染魚のいる間だけ池水からも本菌が検出された。これらの結果から, 本病の検出に蛍光抗体法が有効であり, 高い実用性を有することが確認されるとともに, 細菌性鰓病の流行と本菌の消長が密接な関係を持つことが明らかとなった。
  • J.L. FRYER, C.N. LANNAN, L.H. GARCES, J.J. LARENAS, P.A. SMITH
    1990 年 25 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
     異常斃死の発生したチリのプエルモント近郊の海面小割養殖ギンザケを材料として細胞培養を行ったところ, リッチケア様生物が分離された。この微生物はグラム陰性で約1μの球を主とする多形性を示し, 同じ形状のものが魚の組織内にも観察された。4種のサケ科魚由来の培養細胞で増殖しCPEを発現させたが, 11種類の細菌様培地には発育しなかった。また, クラミジアの群特異LPS抗原に対するモノクロナル抗体に反応しなかった。これらの点からこの微生物をリッチケアと考えた。
  • 稲田 善和, 吉村 研治, 谷口 順彦
    1990 年 25 巻 2 号 p. 115-116
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     3倍体と2倍体アユの間でギロダクチルスと横川吸虫に対する感受性を比較した。ギロダクチルスの感染実験では, 3倍体と2倍体アユをGyrodactylus japonicusに感染したアユと同居させた。横川吸虫の感染実験では, 第一中間宿主のカワニナを実験水槽に投入した。いずれの実験においても感染は成立したが, 3倍体と2倍体アユの寄生中体数の間に有意義はなく, これらの寄生虫に対する3倍体アユの感受性は2倍体アユと同等であると推定された。
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