抄録
1994年1月に鹿児島県で飼育されていたオニオコゼに体表の潰瘍性病変を特徴とする疾病が発生した。病魚を検査した結果, 病変部表層にはグラム陰性短桿菌と共に幅1~2μmの菌糸が観察された。これらの菌糸は躯幹筋深部にも多数伸長し, 周囲を類上皮細胞性肉芽腫に包囲されているものが少数認められた。内臓には菌糸は認められなかった。これらの真菌は, その染色性からメラニン色素を有する不完全菌すなわち黒色真菌であると判断された。病変部から分離された真菌は, その生物学的性状から Ochroconis humicola に同定された。