抄録
未同定の細胞内寄生原虫によるマガキ卵巣の以上肥大(いわゆる異常卵塊)の季節変動を1996年7月から1年間, 約2ヶ月おきに調べた。寄生体は8つの異なる形態を取ったが, 通常そのうちの4形態が見られた。多くの場合, 組織の塗抹標本観察による寄生率は肉眼による発症率より高かった。養殖マガキでは天然マガキと異なり, 翌春まで寄生率は低下しなかった。これは両者の生理状態や生息環境の違いによるものと思われた。寄生虫の発育と宿主細胞の成熟過程から寄生虫の生活環とマガキ卵巣における患部形成のメカニズムを考察した。