2017 年 30 巻 1 号 p. 32-42
2011年東北地方太平洋沖地震津波により,東北地方太平洋沿岸部では大きな人的被害や物的被害が発生した.河川を遡上する津波は海域の津波とは異なり,複雑な挙動を示す.国土技術政策総合研究所にて行われた北上川を模擬した模型実験により入力津波の規模や地形や河川流の有無といった条件を変化させたケースで水位の時系列データを得た.河道内に流れを絞った状態で,浅水流の仮定を用いた計算モデルとの比較を行いその精度検証と特性把握を行った.計算結果は水位のRMSEが約1 mという実用的な再現性であったが,河口部での海岸堤防による反射波や回折波の影響のある地点,高水敷などの水深の浅い地点での誤差が大きいという結果が得られた.また,河口砂州等の地形によって河道内にて3-4 mの水位減少が認められ計算においても同様の結果が得られた.河川流を含む条件での計算結果は約3 mの過大評価となっており,本モデルでの再現性は比較的低いものとなった.