魚病研究
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ニジマス親魚採卵後の斃死について
鎌田 淡紅郎
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1971 年 5 巻 2 号 p. 147-153

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抄録
 1.採卵後のニジマス雌親魚の斃死原因を明らかにするため次のことをおこなった。(1) 過去の事業飼育の資料から,採卵した雌親魚(2年と3年)および2年の雄と生殖腺の発達しなかったいわゆる銀系ニジマスについてそれぞれの斃死率を比較すること。(2) 昭和45年4月~8月の間数回にわたって,斃死魚と衰弱した魚約100尾の肉眼的観察。(3) それらの魚のうち死後変化の認められないものを4回にわたって合計35尾の臓器を固定し,パラフィン切片による顕微鏡的観察。2. 雄および生殖腺の成熟しない2年魚の年間斃死率はおよそ5%,採卵した2年魚では25~40%,3年魚では40~60%で,その差は直接採卵操作の影響によるものと考えられ,年令が高くなる程斃死率が高くなる。3. 採卵した雌ではいずれも滲出液が腹腔内に貯溜し,各臓器は厚い漿膜に覆われて癒着し,臓器もいろいろな病変をおこしている。この漿膜は顕微鏡的観察で慢性増殖性肉芽性炎の組織像を示している。4. 採卵操作による血管や臓器の損傷,それに引続いておこる炎症が慢性に経過し,年間20~30%の斃死をおこしている。5. 採卵後の雌親魚の斃死を減少させるには,できるだけ血管や臓器に損傷を与えないように採卵しなければならない。一般におこなわれている採卵後の親魚にビタミンの大量投与は,斃死を減少させる直接の効果を期待しておこなわれているとすれば疑問がもたれる。
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© 日本魚病学会
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