魚病研究
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養殖ウナギの漿液性腹水病に関する研究―I
腹水について
楠田 理一堀内 三津幸三浦 航高橋 幸則
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1972 年 6 巻 2 号 p. 97-104

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抄録
 養殖ウナギの腹水病の腹水について検討し,つぎの結果を得た。1.腹水は通常青緑色を帯びていて,腹腔内でゼリー状に凝固したものが多い。腹水の比重は<1.011~1.014,蛋白量は0.92~3.40(平均1.66)g/dl,総コレステロール量は99~282(平均145)mg/dl,既成クレアチニン量は1.33~3.93(平均2.47)mg/dl, Na+量は82~115(平均91)meq/lで,病魚血漿の測定値に近い値を示した。2.腹水と病魚血漿の蛋白量には高い相関性が認められ,その相関係数は1970年の病魚が0.86,1971年の病魚が0.59であった。3.腹水の極大吸収波長は色調が異なる場合でも385mμと705 mμ付近に存在し,ウナギ血清から分離した青緑色素の波長と一致した。4.澱粉ゲル電気泳動法によって,腹水と病魚血漿を同時に電気泳動したところ,両者の蛋白分画像は同一個体ではほぼ一致した。5.以上の結果から,病魚の腹水は毛細血管壁の透過性が異常に亢進したために,血漿が非選択的に腹腔内に滲出貯溜したものであると考えられた。したがって,腹水の性状から本病名を“養殖ウナギの漿液性腹水病”と呼ぶことを提案したい。
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© 日本魚病学会
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