魚病研究
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養殖ハマチに寄生する嚢虫に関する研究―XV
生活史について
中島 健次江草 周三
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1972 年 7 巻 1 号 p. 6-14

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抄録

 養殖ハマチに寄生する嚢虫,Callotetrarhynchus nipponica(仮称),の生活史を完結するためにcoracidiumからprocercusに至る経路を追求した。その結果は次のとおりであった。1.procercusの濃密分布水域である豊後水道とその隣接水域4ヶ所より,15属9,066体のcopepodaを採集して精査したが,寄生生物は全く発見されなかった。2.procercusの寄生が最も多い宇和海産カタクチイワンの春発生群について,胃内から未消化のcopepoda 11属,枝角類およびエビ類のzoea幼生,計1,728体を採集して精査したが,寄生生物は全く発見されなかった。3.Tigriopus japonicus 106体および他のcoepoda 9種87体をcoracidiumの遊泳するビーカー内に収容して5日間観察を続けたが,感染は成立しなかった。4.受胎節を産出するドチザメ5尾とカタクチイワシ約800尾を同一水槽内に収容し,5日間隔で10回,計325尾のカタクチイワシを精査したが,coracidiumが直接的にカタクチイワシに感染する証拠は得られなかった。従がって,coracidiumからprocercusに至る経路は,末だに不明のままである。

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