抄録
2009 年に行った厚生労働科学研究費補助金,難治性疾患克服研究事業による「フォン・ヒッペルリンドウ病の病態調査と診断治療系確立の研究」のアンケート調査の結果,VHL 病患者は日本国内に広く分布していることがわかった.多数回の手術に伴うQOL の低下がみられ,機能温存を考慮した治療が必要である. VHL 病患者会が設立され活動を行っているが難病に認定されておらず,患者さんの経済的負担は大きい.VHL 病患者さんは,遺伝情報による差別(就職,生命保険加入)や結婚や子供への影響等,深刻な悩みも抱えており,精神的負担を軽減するためにも非医師遺伝カウンセラーの活躍が期待される.難治性疾患克服研究事業として,診断治療と経過観察指針を各科専門医の合議により作成中である.今後は,診断・治療(遺伝子診断を含む)を全て行える拠点施設を早期に各地につくり,VHL 病に対する国内体制の確立が望まれる.