家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
特集:過渡期の家族性腫瘍診療,その現状と展望
遺伝性・家族性乳がん診療のコンセンサス −多施設アンケート結果から−
杉江 知治 戸井 雅和山内 智香子石黒 洋三上 芳喜岡村 隆仁加藤 大典山内 清明稲本 俊京都乳癌コンセンサス会議
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キーワード: 乳癌,遺伝性,BRCA
ジャーナル オープンアクセス

2012 年 12 巻 2 号 p. 45-49

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抄録
わが国における遺伝性・家族性乳がん診療に関する意識と実地臨床の現状を検証した.京都大学,京都府立医科大学の関連施設を対象にアンケート調査を行い,27 施設・60 名の乳腺外科医より回答を得た.遺伝子性乳がんを疑う症例を経験したことのある施設は52 %,そのうち遺伝子解析を行ったことのある施設は11 %であった.遺伝子を行わない理由としてカウンセリング体制の不備(82 %)や遺伝性乳がんの対処法についてのコンセンサスが得られていない(78 %)を挙げる施設が多かった.遺伝性乳がん家系と判明した場合,発端者の家族に対して89 %が遺伝子相談を紹介するとしたが,予防法は検診のみが97 %であり,化学予防や手術予防を行うと答える外科医はほとんどいなかった.家族性乳がんが疑われる乳がん患者に対して,温存手術を施行すると答えた外科医は83 %ともっとも多く,対側の予防的乳房切除を行うと答えた外科医は5 %にすぎなかった.遺伝性・家族性乳がんに対して,臨床現場では遺伝子検査やリスク軽減手術は講じられていない.社会全体が真摯にこの問題に取り組み,わが国でのコンセンサスの形成と保険制度上の環境整備を行う段階にあるといえる.
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© 2012 The Japanese Society for Familial Tumors
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