抄録
本研究は,卵巣がん患者が遺伝子検査や予防的処置を受けることを希望するか,さらにそれらに対しどのような要望を持っているかを明らかにすることを目的とした.卵巣がん患者5 名を対象に半構造化面接を行った.結果,対象者は,若さや出産の希望,既婚であること,費用の安さ,検査の簡便性,ワクチンなどの予防法があることなどの6つの条件によっては遺伝子検査を受けてもよいと述べた.対象者の語りの中で,娘や孫には勧めるといった肯定的な意見もあれば,怖がらせてしまうなどの否定的な意見も聞かれた.また,遺伝子検査を保険で認められることを要望する対象者も見られた.予防的処置を受ける条件として,ある程度の年齢,出産の希望がない,閉経後であることの三つが挙げられた.医療者は,年齢や婚姻の有無などに配慮した個別的な対応を行い,患者の考えや希望に応じ適切な情報を提供する必要がある.さらに,遺伝子検査や予防的処置を希望する人がそれらを受けられるよう,体制を整えることの必要性が示唆された.