抄録
大腸癌研究会より発刊された遺伝性大腸癌診療ガイドライン2012年版は,日本家族性腫瘍学会の協力のもと,家族性大腸癌委員会が中心となって作成された.2012年に家族性大腸癌委員会にFAPワーキンググループが設置され,多施設後方視的コホート研究が始まった.本研究は本邦におけるFAPの臨床上の特徴や治療の実態を明らかにし,ガイドライン改定の根拠とすることを前提に計画された.本研究には23施設が参加し,2000〜2012年に初回手術が施行されたFAP 303症例の臨床情報が網羅的に集積された.これらは,(1)本邦における外科治療の経年的変化,(2)大腸癌発生リスク,(3)術式・術後合併症,(4)随伴病変の発生リスクと治療,(5)大腸腫瘍の形態,(6)AFAPの臨床的特徴,(7)施設特性と治療内容の7つの観点より解析された.今後は特定のclinical questionに焦点を当てた前向きのコホート研究開始への取り組みが望まれる.