抄録
Lynch 症候群はミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異に起因するがんの易罹患性症候群である.原因遺伝子としてMLH1,MSH2,MSH6,PMS2遺伝子の4 つが知られており,さらにMSH2遺伝子の上流にあるEPCAM遺伝子変異も原因となりうる.今回我々は,クライエントの家族歴からLynch 症候群を疑ったが,家系内に連絡が可能な生存するがん罹患者がおらず,発端者情報不明のまま未発症者の遺伝学的検査を行い,EPCAM遺伝子変異によるLynch 症候群と診断した1 家系を経験したので報告する.