抄録
地域の一般病院における乳癌患者の遺伝性乳癌に関する認識について調査し検討を行った.2017年3月〜2017年5月に乳腺外来を受診し,NCCNガイドライン2016年ver2の遺伝学的リスク評価の基準に該当し研究協力の同意が得られた乳癌患者22名に対して,構成的自記式質問紙調査と面接を実施した.「遺伝性乳癌」,「遺伝子検査」という言葉を知っていたものはそれぞれ21名(95%),18名(82%)と高率であったが,「遺伝カウンセリング」を知っていたのは7名(32%)であった.「遺伝性乳癌」,「遺伝子検査」に関心のあるものはそれぞれ14名(63%),13名(59%)であったが,「遺伝子検査の受検希望がある」としたものは8名(36%)で,面接による聞取りからも遺伝性乳癌に関心があっても遺伝学的検査を希望するとは限らないことがわかった.また19名(86 %)は「遺伝子検査費用は受検決定に影響する」と回答しており,面接でも検査費用が高額であることが受検の意思決定に影響すると示唆された.地域の一般病院の乳癌患者は遺伝カウンセリングや遺伝学的検査についての認知が低く,遺伝性腫瘍について理解を深め相談できる環境の整備が必要であると考えられた.