抄録
遺伝性非腺腫症性大腸癌(HNPCC)は常染色体優性遺伝形式をとる家族性腫瘍を代表する疾患の一つである.このHNPCC の女性において子宮内膜癌が高率に合併する事実から子宮内膜癌の一部は,このHNPCC に関連する家族性腫瘍であることが明らかとなってきた.HNPCC には子宮内膜癌ばかりでなく婦人科癌としては卵巣癌や乳癌との関連も指摘されている.HNPCC 関連の家族性子宮内膜癌は独特の生物学的,臨床病理学的特徴を有すると想像されるもののその実態は不明である.この疾患の病態の解明には婦人科医を中心とする詳細な家族歴聴取を含む全国規模の調査が必要である.