抄録
遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は,大腸癌以外にも,子宮内膜癌,小腸癌,腎盂尿細管癌など,他臓器に癌の発生する一つの症候群であり,遺伝臨床疫学的に不明な部分も多い.2002 年9 月より,大腸癌研究会HNPCC の登録と遺伝子解析研究プロジェクトが開始された.このプロジェクトは,3 省合同のヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針公布後の最初の大規模な遺伝性腫瘍登録プロジェクトであり,遺伝性腫瘍の診断から登録・予後調査まで網羅している.プロジェクトの概略を紹介するとともに,若干の考察を加えた.今後,プロジェクトを推進すると同時に,遺伝性腫瘍の医療に関連する学会,研究会,医療従事者の連携を今後さらに深める必要がある.このような密接な連携のもと,遺伝・臨床疫学情報の十分な収集と倫理的にも妥当な研究の発展が期待でき,さらには,より良いHNPCC 患者やその家族に対する医療サービスを提供することが可能となる.