家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
原著
同時性多発大腸癌の遺伝子不安定性とミスマッチ修復蛋白の不活化
西上 隆之田村 和朗指尾 宏子武田 直久嵯峨山 健沖村 明平野 博嗣中正 恵二山村 武平宇都宮 譲二植松 邦夫
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ジャーナル オープンアクセス

2003 年 3 巻 2 号 p. 79-84

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抄録
現在のアムステルダム診断基準II においてはHNPCC 関連癌が3 名以上認められない家系は遺伝性非ポリポーシス大腸癌(以下HNPCC)とは認識されない.したがって,当然のことながら新鮮突然変異例のHNPCC 例はHNPCC とは認識されないことになる.そこで,Japanese Clinical Criteria の診断基準の1 項目である多発性大腸癌症例に注目し,遺伝子不安定性検査を用いて絞り込みを行い,HNPCC 例のスクリーニングが可能か検討した.また,ミスマッチ修復蛋白(以下,MMR 蛋白)の免疫染色による発現解析を行い,遺伝子不安定性検査同様にスクリーニングの有効性を検討した.多発大腸癌19 例31 病変を対象にマイクロサテライト不安定検査(MSI)とミスマッチ修復システムの標的遺伝子と考えられるTGFBR2,BAX,MSH6 遺伝子の遺伝子解析を行った.多発大腸癌におけるMSI-High は19 例中6 例(31.6%),31 病変中11 病変(35.5%)に認められた.MSI-High あるいはMSI-Low は19 例中16 例(84.2%),31 病変中26 病変(83.9%)に遺伝子不安定性が検出された.MLH1およびMSH2 の免疫染色結果は,MLH1 染色陰性は15/31(48.4%),MSH2 染色陰性は6/31(19.4%),MLH1 およびMSH2 ともに陰性病変は6/31(19.4%),双方陽性病変は16/31(51.6%)であった.MSI-Highの11 病変中MLH1 およびMSH2 ともに陰性病変は5 病変(45.5% ),MLH1 陰性でMSH2 陽性が4 病変(36.4%),いずれかの蛋白発現陰性例は9 病変(81.8%)であった.MSI-High の状態とMLH1 およびMSH2 発現異常に相関が認められ,HNPCC のスクリーニングの手段と考えられた.また,同一症例に発生した異なる腫瘍の解析結果は高い確率で一致していた.MSI-High,標的遺伝子群であるTGFBR2,BAX,MSH6 遺伝子等の異常,MMR 蛋白であるMLH1 およびMSH2 の発現異常は併用することでHNPCC 例の絞り込みに有用であると考えられた.
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© 2003 The Japanese Society for Familial Tumors
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