抄録
遺伝性非ポリポーシス大腸癌(Hereditary nonpolyposis colorectal cancer : HNPCC)の原因遺伝子であるミスマッチ修復遺伝子のうち主たる役割を果たすhMLH1 とhMSH2 の二つの遺伝子は染色体の3p21–23 と2p21–22 にそれぞれ位置する.それらの胚細胞変異により,消化管,子宮体部や尿管系に腫瘍が発生する.我々は,HNPCC 家系の多発癌(胃癌,大腸癌,脳腫瘍)の患者におけるhMLH1 およびhMSH2 の胚細胞変異の解析を試みた.long RT-PCR でhMLH1 のexon2 に欠失があることがわかり,genomic DNA においてはexon2 のdonor site にGT2 塩基の欠失を認めた.今回の遺伝子変異はこれまで報告がないいわゆるnovel mutation であると考えられた.また,遺伝性大腸癌と脳腫瘍の合併に関してTurcot 症候群にも言及し文献的考察を加えた.