抄録
日本人家族性乳癌におけるBRCA1 遺伝子およびBRCA2 遺伝子変異の頻度や両遺伝子におけるSNPs 情報の収集のため,われわれは,ストップコドン・アッセイとDNA シークエンス法を用いた遺伝子診断を行ってきた.その結果,60 家系65 例中11 家系11 例にタンパク切断型変異を見出し,同時に両遺伝子内に多くのSNPs を同定した.家族性腫瘍の遺伝子診断を行うにあたっては,倫理的な側面やプライバシーの保持などに十分配慮したシステムを構築し,その安全な運用に努める必要がある.また,家族性腫瘍の遺伝子診断をさらに推進していくには,採用する診断法についてのclinical validity やcost-effectiveness についての検討も重要である.さらに遺伝子診断を行う上でしばしば問題となる多型とミスセンス変異の問題を解決するには,タンパクの機能解析とそれらを簡便にモニターできる機能診断系の開発が重要である.