抄録
家族性乳癌および家族性乳癌・卵巣癌家系113 家系を対象に,BRCA1,BRCA2 の遺伝子変異を検索した結果,15 家系(13 %)はBRCA1 に,21 家系(19 %)はBRCA2 に蛋白の合成に異常をきたすと予想される遺伝子変異が見出された.BRCA1,BRCA2 の遺伝子変異に起因して発生する乳癌(BRCA1,BRCA2 乳癌)は,散発性乳癌に比べ,有意に若年発症で両側性乳癌が高頻度であった.また,変異保因者が乳癌を発症するライフタイムリスクは,約80%と推測された.臨床病理学的特徴としては,BRCA1 乳癌では組織学的異型度が高く,エストロゲン受容体陰性乳癌が高頻度であったのに対し,BRCA2 乳癌は散発性乳癌と差はみられなかった.これらの特徴は,日本人と欧米白人で共通していると考えられた.